ETERNITY

歩いてアンリアルの中へ ~タラ建築記~


2024/12/06 19:20:34
こんにちは。3D背景グラフィックを担当しているどんぐりコレクターです。

マビノギアンリアルエタニティープロジェクトの第一歩を踏み出したのが昨日のことのように思えますが、いつの間にか時が経ち、文章でご挨拶させていただくことになりました!


当初は、「Unreal Engineでマビノギならではの感性をどのように実装するのか」ということを優先して進めてきました。

小さいながらも有意義な成果を得て、ひと息ついたところで「20年間に制作された膨大な量の建物の再構築ミッション」に立ち向かうことになりました。

本当に…終わりの見えない制作の沼にはまり込んでしまいました…。T_T

作業量も大変でしたが、各建築物が持つユニークなテーマとアイデンティティのため、一つ一つ手作業で丁寧に製作するしかありませんでした。

特にダンバートンの工事を終える頃には、背景チーム全体が真の「建設業者」に生まれ変わらなければなりませんでした。







(コンセプト職人の方々が再創造してくれたダンバートンの建物、本当に素敵ですよね?)


そうしてレベルアップを重ね、自信をつけた背景チーム…。

タラの作業に先立ってワールドを探索しているうちに、またもや挫折を味わわなければなりませんでした。

精巧な文様が入った建築物が都市全域に敷き詰められているのですが、問題はその量が本当に…。本当に多かったんです。

この量だとチーム全員が家に帰れなくなっても解決が難しい状況…。

いったいどうやってこの危機を乗り越えなければならないのか、皆で悩んでいた矢先、アートン・シミニの声が聞こえてきました。


モジュール化をしなさい


はい…!こうしてモジュール化構想が始まりました。

タラはデザインが規格化された都市であったため、幸いにも(!)建築物の分離、再構成計画が可能な場所でした。

おかげで効率的な作業工程を構想することができ、背景チームは、そうして一歩ずつ再構築ミッションの完了に近づくことができました?。




(タラ…クールで…たくさん…たくさん…本当にたくさん…。ただ…たくさん……)




モジュール化とは?

モジュール化とは、3D環境を構成する様々な要素を、再使用可能な小さな単位や「モジュール」に分けて設計し、これらを複数の構成で組み合わせて環境や構造物を作るゲーム制作方法を指します。

各モジュールは基本的な構造を持ち、それらを複数配置または組み合わせて複雑な背景の作成が可能になります。

例えば、数種類の壁セットとその間を埋める柱、階段などを組み合わせれば、様々なサイズの建物を複数作成することができます。




(AIでモジュール化の例として画像を生成してみました。 似たようなものですが、正確ではありません??)



モジュール化はどのようにするのですか?



まず、同じテーマの建物を集めます。

そして、そのテーマの建物ごとに重複して使えるものを把握して、広さと高さ、そして奥行き、デザイン特性などを考慮して分割をどうするか計画します。

大まかな分類作業から徐々に細部に絞り込んでいくのです。 そして、再び逆アセンブリを行い、分割中に見落としたものがないかチェックします。

このような作業を何度か繰り返し、両者の誤差を縮めていきます。

イメージで見ると簡単そうに見えますが、マビノギが最初からモジュール化を計算して作られたわけではないので、実際に作業してみると想像以上に頭が痛い作業です。

素敵なモジュールを計画してくれた最高に優秀な二人にこの場を借りてお礼を申し上げます。


複雑に見えますが、ここまでしてモジュール化をする理由はなんですか?


1つ目は「効率性」にあります。

複数のモジュールを組み合わせて様々な形を作ることができるため、繰り返し作業を減らしながら多様な製作が可能になります。

1つのモジュールのセットで作業すれば、それだけで複数の建物の組み合わせが生まれるわけです。



2つ目は「デザイン変動の柔軟性」です。

1つのモジュールを修正すると、そのモジュールを使用するすべての場所に自動的に反映されるため、設計変更時に一括適用が可能です。

さらに、モジュール化されたシステムは、様々なコンセプトスタイルを適用するのにも有利です。

例えば、同じ壁面モジュールを別のコンセプト、色で適用すれば、また違った雰囲気の仕上がりを得ることができます。



3つ目は「最適化」に役立ちます。

多くのオブジェクトは、レンダリング時のパフォーマンスに影響を与えます。

モジュール化された背景を使用すると、重複するデータが減り、必要に応じてロード、あるいはレンダリングすることができ、パフォーマンスの最適化に役立ちます。

特定の領域のみに必要なモジュールを呼び出してメモリ使用量を最小化し、カメラの視野に応じて動的にモジュールをロードする方法などでパフォーマンスを向上させることができます。



4つ目は「再利用性」です。

モジュール化されたパーツは、全く異なる環境でも再利用できるため、一貫したアイデンティティを維持しながらコンテンツ制作が可能です。

タラで使用されている同じ窓、ドア、建物の壁のモジュール構造を、今後、他の村にも適用できるのです。

コンセプトの問題で、現在制作された村ではすぐに使用できないとしても、今後アップデートされる新しいコンテンツではベースとして利用され、よりスムーズなワールド構築が可能になります。







実際にモジュール化が適用されたタラの建物です。効率性を考慮しながら、同時にクオリティーを損なわないように心血を注いでいます。

新しく制作されるタラが少しは想像できたでしょうか?



マビノギの背景オリジナルのアイデンティティと、アンリアルという新しい環境での良さを両立させるために、建築のノウハウをコツコツと積み重ねています。

このように、マビノギの背景は今後も様々な試行錯誤と考察を重ねながら、どんどん構築・拡張していきますので、引き続きご期待ください。



ありがとうございました!

『Writer どんぐりコレクター』