マビノギ

～タラ酒場 隠し部屋にて～


"騎士狩りの騎士"の話…知ってるか？

あぁ、戦場に現れては兵士を片っ端から斬っていく
謎の騎士団、ってやつだろ。
俺が王国騎士になる時じっさまに いやってほど聞かされたよ。

あれはおとぎ話なんかじゃない。

…どうしたんだ急に。あんたらしくないな。
あんなもん他国の兵士を怯ませるためにどっかの国が流したデマだろ？
現に見たやつだっていやしねぇよ。それに昔っからある話だ。

あぁ、俺だってそう思ってたさ。あの時まではな。
信じてくれとは言わないが、俺は見た。この目で。
今でもあの光景が頭から離れない。
なぜあの時俺は生かされたのか。

ちょっと待ってくれ、あんたのその話を信じる信じないは別として
今回の件と何の関係がある？
俺がここへ来たのは"黒鎧の剣士"の話だ。
まさかとは思うがそいつがそのおとぎ話の騎士だって言いたいのか？

そうだ。

おいおい勘弁してくれ。俺だって暇じゃないんだ。
上官にケツを蹴りまわされ、急を要するからここへ来た。
いつだって正確な情報屋のディンスはどこへ行っちまったんだ？

落ち着けよ。そのディンス様が毎度与太話を吹き込んでみろ。
うちの店は閑古鳥が鳴き、あんたはここへは来やしない。
いいか、こいつを見てみろ。

！！　どうしてこれがここに…。

俺は一流の情報屋だ。自分で盗ってきたわけじゃない。
ここにはこういうもんだって流れ込んでくる。
うちの取り扱い商品の優秀さが分かってもらえたか？

まぁいい、上官には黙っておいてやる。
話を続けてくれ。

今から50年程前の資料だが、この部分だ。

エイリフ王国騎士団…第一魔攻独立分隊？
聞いたこともない。王直属の公的武装組織か。

そうだ。彼らの特徴は魔力の込められた武器を扱い
全員が同じ黒鉄の鎧を身に着けている。
この鎧の形状、お探しの剣士と酷似しているんじゃないか？

あぁ…確かに似ている。滅多にあるもんじゃない。
骨董品を身に着けたイカれた奴ってことか？
あんたさっき"見た"と言ってたな。いつの話だ？

6年前の小競り合い、ブラゴ平原の戦いだ。
その時エイリフとポウォール、両軍を斬って暴れてたのがそいつだ。
目的の分からねぇそいつに目の前で仲間をやられた俺は、脇目も振らずに飛びかかった。
その出来事は傭兵を辞め隠居するのに十分な理由となったのさ。

…言いたかないが、あんたは俺より腕が立つ。
それでもって話か？

あぁ、手も足も出なかった。奴の鎧に傷一つ付けることさえも。
だが一つ間違いだ。
ただ鎧を身に着けた野郎じゃない。異様な力を放つ剣を使っていた。
そこに載ってる連中そのものだ。
何十年も生き残ってる化け物か、力を受け継いだ別の奴かはわからん。
おとぎ話の世界が現実になったんだとしたら、ハイミラク様だって逃げ出すかもな。
とにかくだ、悪いことは言わん。事態を軽く見るな。


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