マビノギ

ダスキ

11/04/16 20:35

人生という長い長い道のりを歩き続けるためには、大事な心得がいくつもある。
努力、忍耐、向上心、意欲………とまぁ例を挙げればキリがないのだけども、その中でも特筆するべきなのは『引き際』なのではないだろうかと思うのだ。
人間というものは、経験……特に失敗や過ちなどによって知識を得たり感覚を磨いたりということが可能な生き物だと、相変わらず何かのテレビか本で見た記憶がある。


つまり数式などの絶対的な答えがある問題を解くのと同じように、口では説明し辛い感覚的なパターンや問題なんかも、『何かがヘンだ。何かがおかしい』などといった過去の経験から警報を告げる違和感に気付くことが出来れば、事前に問題を回避、あるいは同じ過ちを繰り返さないといったことが可能となるわけである。


同時に、過去の自分から発せられるメッセージを否定してしまうのもまた、自分である。
『まだ大丈夫。もう少しなら平気』……その時々の状況にも左右されるのだろうが、大抵はそんな思考によって過去からの警報をあえて見逃し、後悔したりするハメになるのだろう。


『今回は大丈夫……いや今回はコレ来るって……この台、絶対上がり調子だから。いやマジで……』


そう、そんな調子で尊い諭吉を二枚無に帰してしまったどこかの馬鹿のように……。


相変わらず本編とはそんなに関係ないんだけども、あまりにやり切れなかったから書いておきたｋｋ（




前回、白さんから課金を勧められた俺は若干戸惑っていた。

俺『課金……ですか』

課金というシステムがあることは、その頃は既に知っていた。
ただ具体的に発生するであろう料金及び、それによってどのような恩恵がもたらされるのかまでは理解していなかったように思う。
大方、リアルマネー１００円くらいでマビのデカい剣（当時唯一の大剣であるモアや２ｈｓ）なんかを手に入れられるんだろうな、くらいの解釈だったかも知れない。
正直、ガチャポン感覚でそういったアイテムが手に入るのであれば喜んでガチャガチャしたいところであったが、生憎相手は駄菓子屋に置いてある親しみ馴染んだ四角いプラスチックのボックスではない。精密機械と電気で動く、ある種対極に位置すると言ってもいい『ＰＡ・ＳＯ・ＣＯ・Ｎ（それっぽい発音』なのだ。
多少扱いなれてきたといっても、それでもまだ初心者の域を出ない。マビノギというオンラインゲームを続けていられたのだって、料金が発生しないという安心感があったからだと言っても過言ではなかった。

白さん『課金をすることによって色々と便利になるんですが、具体的にどうなるかは知ってますか？』

俺『いえ、詳しくは……』

白さん『具体的にはですね、（ファンタジーサービスの説明）とか、（キャラカード・転生システムの説明）や、（ペットの利便性）になるので、課金すれば大分便利になりますよ』

「公式ＨＰ見ろ」とは言わず、白さんはまるで無知だった俺に分かりやすく丁寧に教えてくれた。
そして白さんから教えてもらった情報で大きく興味を引いたのが以下三つ。

１．死んでもたゆんたゆんが復活させてくれる。

２．ペットの馬。

３．精霊武器。

ペットシステムは白さんとクマ討伐に向かった際、二人乗りさせてもらったことで多少知ってはいたが、あれが自分でも使えるということはかなり魅力的だった。たゆんたゆん復活に到っては言う事ナシ。
そして３つめの精霊武器……これが後々、俺のマビノギライフをかなり左右することになるのだが……それはまぁ別の話である。
ちなみにＧクエについてはスルーしていた。重要性も特に理解していなかったし、どうせ何かちょこっと『木の実２０個集めて来い！　ケイティン』みたいので終わりだと思っていたのだ。


白さん『大体こんなところですね。多少お金はかかりますけど、ペットは一度購入すればずっと使えるのでオススメです。戦闘でも役に立ちますし』

俺『なるほど……精霊武器っていうのは、あれですよね。時々黒さんが使ってる、あの光る剣でしょうか？』

白さん『そうですねぇ』


ただでさえ憧れのデカい剣。それが光り輝くなんて、俺にとって、もはやそれはマスターソード並みの憧れとなった。


白さん『ちなみに精霊は自分で性別を決めて育てることが出来ますよ。会話したりも出来ます』


その言葉に、俺は耳を疑った。
ただでさえゲームキャラやストーリー（脳内補足アリ）に感情移入しやすい性かｋ……お年頃だったのだ。直撃した。自分だけの相棒を連れて旅が出来るなんて、それはもうアレだ……うん、アレなんだ……。

俺『ちまみにそれは、どうすれば手に入るんでしょううか』

内心の動揺を悟られぬよう、俺は極めて平静を装って訊ねた。完璧だ。

白さん『条件はいくつかあるんですが、課金することが大前提なんですよ。まぁそこはネクソンも商売ですから……』

俺はリアルで激しく舌打した。多分５回くらいしたんじゃないだろうか。
何故なら、課金にはクレジットカードが必要であると何かの拍子に公式ＨＰで見たことがあったからだ。


当時、俺が高校生であったことは前々のトピで記したことと思う。
その頃の俺はクレジットカードどころか、まだ携帯でさえ入学祝いでやっと手に入れることが出来たほどのフレッシュボーイだったのだ。思い返してみれば、当時の世間はまだ携帯さえも『高校生から持つ物』というのが一般認識だったように思う。
ともかく、クレジットカードなど、少なくともあと５年は持つ予定も算段もなかった。というか今も持っていない。


この時の俺の心情としては、『課金したくても出来ない』というのが正直なところだっただろう。
元手がないのではなく、手段が複雑すぎて諦めざるを得なかったのだ。

俺『……確かに、出来れば課金したいんですけど……クレジットカードの類は持って無いので……』

白さん『あー、なるほど；』

正直、この時ほど『ボクを大人にしてよぉ！！』と子供っぽいことを思ったことはない。

黒さん『んー、それじゃあウェブマネーはどうかな。あれだったら普通にコンビニで買えるからさ』


なん…………だと………？
そこからの会話は再現していくと延々と長くなるので省略しようと思う。


ウェブマネーという耳慣れない言葉を聞いた俺は、さっそくその購入手段を黒さんに教わった。
そして教わって十分後には近所のセブン・イレブンにぶっ飛んでいった。

店員「あー、申し訳ございません。あれはウチではやってないんですよー」

この時ほど地域格差を恨んだことはない。なんだか色々とマイスコア（負）が更新された一日であった。
現在でこそ、どのコンビニでも当たり前のように取り扱っている電子マネー類であるが、当時はまだまだ一般的とは言い難く、俺の住んでいる田舎町……というか県では、ウェブマネーを取り扱っているのはファミリーマートただ一つであった。


ちなみに、この一連の出来事から俺はファミマ信者となるのであったが、それは別にどうでもいい。


実際に住んでいる方にはご理解いただけると思うが、冗談ではなく田舎は車やバイクがないとロクにコンビニにも行けない。それも店舗を限定するとなると尚更である。
というわけで、俺は電車に乗って６駅ほど離れた町のファミマに入店。
親切な店員さんに教えてもらいながら、見事初ウェブマネー購入に成功したのである。
なんだか脳内で『初めてのお使い』のテーマが流れたかもしれないが、気にしては負けなのだ。


一時間に二本しかない帰りの電車を待ちながら、俺はポケットに突っ込んだウェブマネーの感触に満足しながらニヨニヨしていた。寂しくなったサイフも気にならずにご機嫌だった。



そのニヨニヨは、やがてディスプレイの前で定着してしまうとも知らずに……。