≪小説≫ブロントさんがマビノギを始めたようです |
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ドロッセルン | 09/05/24 06:54 |
大陸の北端、穏やかな空気で満たされている事で有名な村、ティルコネイル。川沿いのゆるやかな曲線を描く道を、わいわいと騒ぎながら歩く。宿屋の前を過ぎ、雑貨屋の脇から広場へと出る。
「いやぁ、流石師匠。ジャイスプをマグで一撃とか強過ぎるんですけど」
「すごいなーあこがれちゃうなー」
後ろを並んで歩く、2人の少女があたしのすぐ隣の女性に再度尊敬の声を上げる。
「それほどでもないさ」
背中にレザーロングボウ、腰にクロスボウを提げた蒼の長髪の美女が、肩越しに二人の弟子を見やる。誇るわけでもなく驕るわけでもない見事な謙虚さだった。
「頼るのはいいが、あたしがいなくても行けるようになってほしいな」
すぐ隣を歩きながら微笑んだ師匠は、後ろの二人にだけ告げているように見えた。
「…おや?」
広場の中心まで来た途端に見えた物に、誰からとなく立ち止まる。
「誰か倒れてるね」
後ろの片割れが言った通り、人が横たわっていた。ベストとズボンを着て、手には何故かガーディアングローブ。盾も無しに片手剣を1本右手に掴んでいる。誰がどう見ても初心者だった。銀の長髪が背中の上で扇のように拡がっていた。
「オウフ」
などと変な呻き声を上げている。
「大丈夫ですかー」
とててて、駆け寄ってみて、軽くゆする。
次いで、後ろの二人も初心者の元に近付いていく。
「1匹相手してる時に矢を射ってくるとかあまりにも卑怯過ぎるでしょう?」
全身包帯だらけの初心者を囲んで事情確認タイム。
「トエrボーからのクエであるアルビダンジョンとやらはカカッと終わらせてキアダンジョンとやらに向かったら汚ないゴブリンに卑怯な攻撃された。汚いな流石ゴブリンきたない」
「それで死んでここまで戻ってきたと」
「俺のPスキルでは無理と判断してアワレ骨になる前にとんずらで戦力を整えに戻ってきた」
「いや、ここに飛ばされたって事は、やられたから」
言ってる事は弱弱しいくせに、妙に自信は満々な初心者だ。
「黄金の鉄の塊で出来たナイトが皮装備のゴブリンに引けをとるはずがない」
「もう勝負ついてるから。…ていうか金属装備が皆無なんですけど」
どう見ても防御保護が致命的に致命傷なのは確定的に明らかだった。
「…レイミー」
「ほえ」
ずっと無言だった師匠が不意にあたしの名前を呼ぶ。自然と目の前の初心者含む全員の視線が師匠とあたしに集まる。
「手伝ってきてあげなさいな」
「あ…、はい」
あたしが? 疑問に思ったのは一瞬だけで答えはすぐに出た。キア初級程度など、確かに行くとしたらあたしが適任だろう。
立ち上がる。袖の付いていない赤と白のワンピースの、スカートの裾が揺れる。
「ほう、経験が生きたな。いいぞ、手伝わせてやってもいい」
「おいィ? お前ら今の発言聞こえたかよ」
「聞こえてない」
「何か言ったの?」
「あたしのログには何もないです」
「すいまえんでした;: 手伝ってください(土下座)」
「あたしはレイミー。一応、よろしくね」
頭の後ろに付けた大きなリボンの位置を直しながら、微笑んでみる。
「ブロントだ。ヴァナでは一級廃人だったがここでは一級新人だからなさん付けでいい」
「…それは謙虚って言えるの? まぁ、頑張ろうねブロントさん」
「よろしく頼む。 腋が露出とか…お前は明らかにモデルが麗…」
「やめろ馬鹿。この物語は早くも終了ですね」
そんな他愛のない会話をしながらオオカミ広場を歩き続ける。エリンは今日も平和だ。
やがて、ダンジョンの入り口が見えてきた。
ぼわんと沸いた5匹のゴブリンの内1匹に、ブロントさんが突っ込んでいく。
どかっばきっ、と斬撃とは思えない音が響き、アワレにも攻撃された奴がごろごろと転がる。倒し切れない辺りがやはり始めたばかりといった感じね。
「…え?」
立ち上がったゴブリンの元に走り寄っていくブロントさん。追撃によってダメージを加速させようとする気が満々なのが確定的に明らか。でもその行動はマビでは死亡フラグだから!止める間もなく、剣を振り上げたところを汚い斧に迎撃されて吹っ飛んでいく。
…やれやれ、色々と教えないといけないみたいね。
「という事でレイミーのディフェンス講座をやるよ!」
包帯を巻いてあげてヒーリングもした後に、あたしは握り拳を掲げて宣言した。周りに転がるゴブリンの死体達がどこかへと消えていく。
「殴ったらディフェンスをするの。ガードをしたら殴る。殴り続けるが通用する程甘い世界じゃないよ」
「そーなのかー」
少女指導中…
「なるほどな攻撃は最大の防御ということか。今回のでそれがよくわかったよ>>レイミー感謝」
いや、全く逆の事教えたんだけど。
「じゃあ次の部屋で実践ね」
「hai!」
さっきよりも短い時間で5つの死体が転がる部屋で、あたしはつかつかとただ1人のPTメンバーに近寄る。
「そうそう、そんな感じ。それが基本中の基本だから癖にしてね」
不思議な事だが、防御に関してのセンスはかなりあるようだった。なんというか、経験豊富という感じだ。
「下段ガードを固めたナイトに隙はなかった」
「じゃあ次のステップね」
「常に先頭に立ち、敵のタゲをとり続けて仲間を守ってきた俺にはこの程度造作もない」
「わかったから。次行くよ?」
「攻撃と防御しかにいファミコン式戦闘システムでしょう? もう極めたから。この物語は早くも終了ですね」
かっちーん。
「ブロントさん。じゃあディフェンスしてみて」
にこにこと笑顔で告げる。奥深いこの世界を、そんな簡単に極めたと思われてたまるものですか。
「なんだ俺のガードの素晴らしさにハットを撃ち抜かれたのか」
無視。盾を持っていないのでわかりづらいが、相手の攻撃から耐える威勢がオーラで見えるようだった。初心者とは思えない見事なディフェンスだと感心はするがどこもおかしくはない。でも、それだけじゃ駄目なのよ。
剣を腰に納め、拳を固めて重心を低く。息を吐きながら距離を詰める。ガードの間を縫って胸ぐらを左手で掴む。
「おいィ?」
驚きを浮かべる色素が薄い顔(黙ってればイケメンね。なんとも思ってなかったけどこうも間近で見ると一瞬どきっとしてしまうわ)を睨みながら右腕を脇腹に捻り込む。
面白いくらいに決まった。弧を描いて宙を舞い、石床に顔面を叩き付けてから大の字に転がる。あちゃー、殺っちまったかな。
「…ガードを無視とかあまりにも卑怯過ぎるでしょう?」
お、生きてる。
「汚いな流石ニセ脇巫女きたない」
「おい、やめろ馬鹿」
ヒーリングを詠唱して、ダメージを癒す。もさもさと立ち上がる長身に指をびしっ!と突き付ける。
「わかった? スマッシュと言って相手のディフェンスを無視して攻撃する事も出来るの。ディフェンスしてくれてないと通用しないけどね」
「…なるほど」
何か屁理屈をこね出すと思ったら素直に頷いたのには驚いた。
「そのハイスマとやらを教えてくれ」
「スマッシュね。もちろんよ」
人に何かを教えるのは初めてだったけど、すんなりとブロントさんは理解し吸収していく。師匠があたしに教えてくれた事の受け売りばかりなので、師匠の指導法が達者だからなのか、彼にセンスがあるだけなのかはわからないけども。
本音を言うなら楽しくなってきていた。そんな事口に出来るわけもないけれど。
「うん、強くなったね」
「それほどでもない」
ディフェンス、スマッシュ、カウンター。3階の半ばに着く頃には基本スキルの扱い方には慣れてくれていた。
「思ったのだが」
「ん?」
ディフェンスで殺し切れないダメージを回復してあげてる時に彼が口を開いた。
「お前の治癒力は素晴らしいと思う」
…。
「まぁ、応急処置とヒーリングは結構練習してるからね」
「ほう」
手を後ろに組んで、彼に背を向ける。
「そのせいで他の二人より成長遅れてるけどね」
愚痴るつもりではなかったが、言葉にしてしまっていた。彼からの返事はない。続けてみる。
「あたし達3人ってさ、同じ日に冒険初めてさ、同じ時に師匠に出会って、同じ期間成長してるんだけどね」
色んな所に4人で行った。色んな経験をみんなでした。それなのに。
「信じてくれないかもだけど、あたしは臆病でさ、最初全然戦えなかったの。あたしが戦わない分他のみんなは戦わないといけなくて。そうしたら当然怪我とかするわけね。それが申し訳なくて、真っ先に回復方法の修練をしてたのよ」
爪先で床に「の」の字を画く。
「そっちに気を回してる内に、気付いたら一番弱かったの。戦闘経験の数からしても当たり前なんだけどね」
「ヴァナではヒーラーがパーティにいないときつかったぞ」
「この世界はね、回復アイテムが安いし使い放題みたいな面があるのよ」
実際、あたしがみんなといて「役に立っている」と感じた機会は少ない。
「あたしらしくないかな、さっ先に進みましょ」
「…レイミー」
前に出した足を止められる。背後でブロントさんが近付いてくるのを感じる。
「お前のヒールで俺は救われている。それは事実だ。ありがとう」
…。
胸に溢れたその感情は、どう言葉にすればいいのかわからなかった。
「…はいはい。行くわよ」
とりあえず振り向く事もできなかったので足を進めてみる。PTを組んだのはあたししかいないのだからそう感じるかもね。そう自分に言い聞かせた。
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我孫子_tri | ブロントさんって誰? 09/05/24 07:03 |
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ドロッセルン | 熱弁で広めたい所ですけども、ごめんなさいググッてくださいませ;; 09/05/24 12:52 |
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RATS | 素晴らしい小説だすばらしい 見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない 09/05/24 07:10 |
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ドロッセルン | ありがとうありがとう 09/05/24 15:48 |
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リューサン_rua | 俺の知り合いにBurontなる者を知っているかたずねたら 「誰それ?」「外人?」「歌?」こんなもんだから、Burontの小説みせとも「訳わからんね」「笑う坪どこ?」ほらこんなもん 大体の人はBurontなんて知らないし興味もなさそうだったな。 09/05/24 08:11 |
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壱之太刀燕飛 | まぁBurontさんネタ自体、基本はネ実民ないしはFF11プレイヤーの内輪ネタだから・・・ 最近は2chの至る所にコピペが貼られてFF11未経験の人にも知名度上がって来たけど、それはあくまでもネット内での話。 むしろそこら辺にいる貧弱一般人がBuront知ってたら逆に引くわw 09/05/24 08:23 |
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ドロッセルン | ふむ。ブロントさんを知らなくても楽しめる作品にしたかったのだけれども、そこは文章力が致命的に致命傷だったということね。今回のでそれがよくわかったよ>>二人とも感謝 09/05/24 12:12 |
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蒼翠_cic | 思うにこれは小説ではないのではないのか? ストんリーを書いただけで小説とか言うと裏世界でひっそりと幕を閉じるので やめるべきそうすべき。 09/05/24 08:41 |
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ドロッセルン | おいィ? これのどこが小説じゃないって証拠だよ。 …と言いたいけれど、おっとと、痛い所を突かれた感。 ぐうの音も出ないので素直に病院で栄養食を食べるハメになろう。 09/05/24 12:26 |
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蒼翠_cic | 「、」なんか使うとブロント語の魅力がマッハで無くなるのでやめるべき。 汚い、流石忍者きたない 汚いなさすが忍者きたない ほらこんなもん 09/05/24 17:35 |
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せふぃろしゅ | しめさばとらっきょうを最高の 食べ合わせと思ってるのかな? スレ主 09/05/24 09:19 |
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ドロッセルン | 愛でてよし、食べてよしよ。 09/05/24 12:07 |
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reona_mar | 不覚にもワロタwww 09/05/24 09:49 |
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リヴァース_mor | 何度も見つめられ装備の貴重さを世に広めることでリアル世界よりも充実したファンタジーライフが認可される 09/05/24 09:56 |
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ドロッセルン | 「装備の貴重さ」がブロントさんを示す暗喩であるのなら、応援と受け取らせてもらってもいいかな? 09/05/24 12:45 |
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不知火 | 見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない 09/05/24 18:23 |
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テッサリア_mar | ブロントさんは光属性のモンクタイプなので素手がよかったが 別におかしくはないな。そのうち見事なカウんターも覚える事だろう 09/05/25 08:57 |
件名 | 名前 | 日付 | 閲覧数 | ||
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2005/03/23 | ||||
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2005/03/04 | ||||
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2005/01/17 | ||||
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リーガルワイ | 2009/05/24 | 2525 | |
+37 |
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もりそば | 2009/05/24 | 6416 | |
+17 |
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コンテロ | 2009/05/24 | 3619 | |
+3 |
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コンテロ | 2009/05/24 | 1316 | |
※元の記事は削除されました。 |
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+7 |
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コンテロ | 2009/05/24 | 4130 | |
※元の記事は削除されました。 |
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+12 |
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せふぃろしゅ | 2009/05/24 | 1808 | |
※元の記事は削除されました。 |
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+75 |
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レメディ_tar | 2009/05/24 | 4551 | |
+17 |
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ドロッセルン | 2009/05/24 | 4355 | |
※元の記事は削除されました。 |
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※元の記事は削除されました。 |
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邪神アイリス | 2009/05/24 | 1558 | |
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abon_mar | 2009/05/24 | 4343 | |
+49 |
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猫きのこ_mar | 2009/05/23 | 3488 | |
+12 |
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亞吏眞_tri | 2009/05/23 | 2751 |