マビノギ

諸君、私は木刀が大好きだ。
 
小説だ。テーマはこの方より。
 

武田明信	（　・０・）ｂ　意味不明な「木人形」・・・あれいぢるのわどう？ 　　　　　ネク村　全然いぢる気ナイみたいだし・・・

とのことで書いてみた。ではどうぞ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
僕は練習用の木製人形。
おそらく戦争の頃から練習用として作られ、叩かれ、斬られ、そして使われなくなった今も変わらず、ここに存在している。
あの頃も、今も、ずっとここに立って、いろんな事を見てきた。
 
　　　※　　　※　　　※
 
「おおっ！この人形はいったい！」
夕焼けのオレンジ色を、銀髪に映した少女は言った。
少し色黒の顔立ちは幼く、その小さな体躯に大き目の弓を背負っていた。
「ちょっと汚れてるね……。よし、ヴィルテが拭いてあげます！」
彼女は町に戻ると、両手に紙を抱えて戻ってきた。
「あよいしょ、よいしょ。隣は何をする人ぞ♪」
妙な節を付けて、僕を拭き始める。
１００枚ほどの紙の束は、５０枚ほどが使われ、茶色く汚れた。
「いよし、綺麗になりました」
彼女は汚れた紙を抱えてまた村に戻り、それを捨ててきたのか、また戻ってきた。
「暇ですし、ほら、残った紙はこうしましょう！」
ぱたぱたと、慣れた手つきで紙を折りたたんで、それを風に乗せた。
「今の時間が一番なんですよ、すっごく綺麗なんです」
色とりどりの折り紙を次々折り曲げ、空に飛ばしていく。
夕焼けの影を映して飛ぶ紙飛行機は、とても美しかった。
 
いつだか、そのしばらく後。
「おや？　この人形何？　黒法衣、知ってる？」
「たぶん、戦闘訓練用の人形だよ」
２人の旅人が、僕の前にあらわれた。
１人はリュートを背負い、綺麗な赤いローブに羽根付き帽子。
もう一人は水色のローブにバンダナを巻いて、腰に剣を挿していた。
「昔に作られたんだろうけど……綺麗だね、誰かが洗っていったのかな」
僕の体を触って調べる青年。
やがてその手が、訓練兵に斬られた傷に行き当たる。
「ルー、やっぱり戦争の頃だよ。切り口が相当古い」
「……」
女の人は少し黙っていた。
「戦争ねえ……それが仕事とはいえ、斬られるのは辛いでしょ。
……慰めになるかは知らないけど、あたしが曲でも奏でてあげる」
彼女はそういってリュートに手をかけた。
そこから流れる音色はどこか悲しかったけど、癒される音色だった。
 
いつだか、そのしばらく後。
「む、面白そうな人形発見！」
耳の長い、いわゆるエルフという種族だろう少女が駆け寄ってきた。
耳はぴんと長く、木刀に盾。金髪のストレートだ。
「練習用の人形か……よし、いざ参る！」
手に持った木刀を振り上げ、僕に打ち付ける。
それなりに強かったけど、それでもやっぱり女の子だ。兵士ほどではなかった。
木刀が打ち込まれること３０分ほど。彼女はすっと木刀をおろした。
「ありがとうございました！」
ぺこっと頭を下げて、ぐるっと踵を返す。
「また来るよ！」
こちらを向かず、また駆けて離れていく。
その元気な、常に目の前の事を見つめる瞳に、僕はなにか元気のようなものをもらった。
気がした。
 
いつだか、そのしばらく後。
「おや、これは……」
魔法使いの服に身を包んだ旅人が、僕に歩み寄ってきた。
つばの広い帽子に、木のワンドを持っている。
「昔のですね、ずいぶんと……」
ふと、遠い目をして、しばらく僕の隣にたたずむ。
やけに鳥の声が聞こえた。
――そしてしばらくしたのち。
「あなたは、傷を負っていると思います」
どこを見るでもなく、そう彼女が呟いた。
「わたしは、傷ついた人――いえ、たとえ魔物でも、人でも、傷つき、苦しんでいるなら……
救うのが、私――カフェチョコの、仕事です」
そういって彼女は、僕の体に丁寧に包帯を巻き始めた。
僕の体の、傷ついたところに包帯を的確に巻き終えたあと、
「あなたに幸福が、ありますように」
そう言って、彼女は去っていった。
 
いつだか、そのしばらく後。
「……」
気がついたら隣に、褐色の肌をした男が立っていた。
灰色の目に灰色の髪。茶色のチュニックを着て、木刀を２本携えていた。
「……」
まじまじと僕の状態を見る。
綺麗に拭かれ、包帯を巻き付けられた人形なんて、そうそうないだろう。
さぞかし異様な状態になっているはずだ。
「私は、木刀狼だ」
僕に自己紹介をする、男。
「……面白い人を紹介しよう。きっと、君の願いを叶えてくれるだろう」
そう言って、去っていった。
不思議と、その言葉は強く私を信じさせる響きを持っていた。
 
いつだか、しばらく後。
「木人形さん、木人形さん」
夜中、月明かりに照らされて、少年があらわれた。
金髪の目、紺色の瞳は、夜空の星を思い浮かべさせた。
「あなたの願いを叶えに来ました、さあ、あなたの願いはなんですか？」
にぱっと明るい笑顔を浮かべて、僕を見つめる。
僕は――
「はい、わかりました。夜明けを迎えたときには、あなたの願いは叶えられてますよ。
ただし、３日だけです。その間に、願いを叶えてくださいね！」
そう言って、彼は去っていった。
 
そうか。
僕の、願い。
戦争で死んでいった仲間の仇討ち、魔族と戦うことではない。
――魔族も人も関係なく、助ける人と会ったから。

練習台となるのを避け、逃げることでもない。
――共に鍛錬し、感謝さえしてくれる人に会ったから。
 
僕は、僕の願いは――。
 
　　　※　　　※　　　※
 
ダンバートンの町。
今日もいろんな人が通りかかるこの町で、私はまたも木刀の普及に努めているわけだ。
そんな町中、今日は珍しい格好をした青年が、子供たちと戯れていた。
体に包帯をぐるぐる巻きにし、路上で子供たちと一緒に遊んでいるのだ。
「ほら、こうしてこうしてこう折ると……」
「わー、すげー！」
「こうしてこうね、できた！」
彼は紙飛行機を折ると、すっと風に乗せた。
青く澄み切った空を、風を切って飛んでいった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
武田明信さんありがとう。
名前出たその他の方々ｽﾏｿ。