自由掲示板

ゴブリン侍2 ~三葉~
ネカマのてあ 08/04/17 03:14

第1話  「ひとつ葉」
 
 
「詩っ人さーん、一曲お願いできますか?」
 
 女性が私に詩(うた)を依頼してきた。ここ最近、仕事が増えている。いいことだ。・・・理由にはいささか不満があるのだが、お金があるのはいいことだ。なので私は愛想良く彼女のいるテーブルへと向かう
 所はダンバートン。いつもの店である 
 テーブルには彼女の仲間らしい男女が一人ずつ、男の方が彼女へと話しかけた
 
「みるち~、この人が?」
 
「そうだよ、ホラーとか悲劇専門の詩人さん。涼しくなるよー」 
 
 ほらほおらね、そうだと思ったんですよ。どうも最近私、そういう認識なんだねこれが、あの、私の詩は冒険者賛歌ですよ。怪奇でもなければ泣かせもしません。胸躍る活劇なんですったら・・・と思いつつも、私も商売なので顔には出しません
 
「いや、言ってるし」
 
 と男性が苦笑する。あれ?喋ってました?・・・これは失礼。こほん。ではお客様、どのような曲がよろしいですか?お詫びに規定料金にお酒の一杯で披露いたしましょう
 
「え?それって何かへんじゃ・・・あれ?」
 
 もう一方の女性が悩む。いやぁ、そんなことないですよ。大サービスですね
 
「なんでやねんっ!、と一応つっこんでおいて、曲はねぇ、何か酔い覚ましになりそうなので、イノセンスもおぼろんも良かったよね?」 
 
 ありがとうございます。ではそうですねぇ、とある村のお話をいたしましょうか
 いえ、とある少年の物語かもしれませんが、まぁ、どちらかはお聞きになってご判断ください
 と私は口上を述べ、リュートをひと撫で
 
 とある村、あるいは少年の物語
  
 
     ~ゴブリン侍~
 

 岩の様な拳が暴風を伴いエルフの端正な顔(かんばせ)に叩きつけられる。頬骨を砕かれ、眼球が飛び出し、空いた眼窩と鼻から赤黒い何かを溢れさせながら、エルフの体は空中で踊る。その細い首は荒々しいエスコートに抗えず、捻り折られた
 
「はっ、はぁああぁああああっ!」
 
 呼気とも雄叫びともつかない声を上げ、男は歓喜する。勝利に。種族の敵を一人葬り去ったことに
 そして、滅ぼすべきものがまだそこいることに
 
「さあっ同胞(はらから)よ!砂漠の棒っ切れどもを我らの手で叩き折ってやれぃ!!」
 
 男は後方に続く六名のジャイアントたちを鼓舞する。応える声が平原へと響き渡った
 対するエルフは一人を失ったとはいえ今だ彼らの倍。しかしもはや数の差を意識するものはいなかった。彼らに先駆けエルフへと突進していく男、あいつに続けば勝利は疑いない。そんな確信をその背は抱かせるのだ
  
 
 互いにそれは予期せぬ遭遇であった
 
  
 人間の集落へ族長からの便りを伝える旅の途中、青年の一団は出くわしてしまった
 憎むべきジャイアントたちに 
 初めて見る巨人に青年は内心怯えた。なにしろでかい、とにかくでかい。背丈も、腕の筋肉でさえ丸太のようで、彼が二人いても足りないだろう
 しかし、彼らは7人、こちらは16。人数で多きく勝っていたし、何より自分以外は皆、実戦の経験のある勇士たちばかりだ
 巨人たちに分別があるのなら、無用な争いは避けるだろうし、戦闘になったところでこちらの有利は動かない。そう考えて青年は、緊張に荒くなる呼吸を抑えていた
 それぞれの集団から代表者が出、話し合うことになった。らしい。睨み合いをしていただけのように青年には見えていたのだが、エルフ側から3名、巨人達から2名が無言で前に進みでたのだ。青年は知らぬが取り決めのようなものが、もしかしたらあるのかもしれない
 それなりに距離があるので青年には代表者たちが何を言っているのか聞こえなかったが、半時もしないうちに両者が離れこちらへと帰って来るのを見て、どうやら戦闘は回避したようだと青年が思った。その時、エルフ側の代表者の一人が弓を抜き放ち矢を番え、仲間の元へと戻る巨人へと放った。流れるような動作、見事な抜き打ちであった。矢は狙い違わず、背を向けた巨人へと飛んで行く。その技術は見事だったが、それは、完全なる騙まし討ちであった
 だが、巨人に矢が突き立つことはなかった
 巨人は飛来する矢を、まるで予測していたかのように、振り向きざまの裏拳で薙ぎ払ったのである
 巨体が疾駆する
 矢を放ったエルフは、次いで数本の矢を放ち、全てを彼の巨躯へと集中させるが、ことごとくが鈍銀の拳当てにて叩き落される。肉薄した巨人は、拳を振り上げ、駆け抜けてきた勢いのまま、彼のエルフへ行いの報いを与えたのだった 
 
 彼は叫んだ。遠く離れた青年の体を震わせるほどに
 
 それが戦いの始まりである
 
 
     ~ゴブリン侍~
  
 
「気をつけてね」  
 
 彼女は胸の前で、つまんだ葉を回しながら、それに目を落として小声で言った。うん。短く答えた僕もまた、回るその葉を見つめていた
 いつもの木の下、天気は良好。砂漠の日は燃えるようだが木陰は風も吹いて心地良い。彼女と二人、並んで座り、何でも無い事を語り合う。それこそ毎日のように
 けれど今日は会話が続かなくて、手慰みに摘んだ葉を彼女はずっと指先で回している。人間の集落への使者に選ばれたんだ。そう告げてから彼女はずっとそんな風だった。喜んでくれると思ってた。それは一人前のエルフだと、戦士だと認められたということだったから。砂漠を越え、森を越え、さらに草原を
行かなければ辿り着けない程遠くに人間達は住んでいる。猛獣に怪物、時にはドラゴンさえ出現する、そんな旅をするに足ると認められた。きっと一緒に喜んで、励ましてくれると思っていたのだ。けれど彼女は掌中の葉を弄ぶだけ
 不意に強くなった風に、肩に掛かっていた亜麻色の髪がなびいた。髪が邪魔なのか少し目を細めて彼女は俯いたまま、僕を流し見る。それは僕じゃなくて
もしかすると風の行方を確かめたかっただけだったのかもしれない。けれど、僕は彼女の仕草に、鼓動を止まるのを感じ、思わず・・・
 唇を離し、目を開けると、泣き顔の彼女が。あ、う、あああっ、な、なにをやったんだ僕はっ。やっ、何をしたかは解ってるんだけどっ!そうだ、謝らな
 
「ちゃん、と」
 
「ぇ」
 
「ちゃんと帰ってきて」
 
 そう言って、今度は彼女のほうから唇を寄せた
 
 
     ~ゴブリン侍~    
 
 
 青年は戦い最中、ただ逃げ回っていた。夢中で矢を放ったような気もするが、乱戦の中で効果も上げられず、そもそも結果も解らず、やはり駆け回っていただけという記憶しかない。そして倒れた仲間の体に躓いて転び、起き上がろうとした先に彼がいた
 一撃で青年たちのリーダーを倒した怪物。その瞳に見下ろされた青年は死を覚悟した。意識が出立前へと飛んだ 
 
 ああ、ごめん・・・僕は・・。 
 
 しかし死の瞬間は何時までたっても訪れない。青年は恐る恐る眼前の巨人を見上げた。ジャイアントの瞳は、はや青年を見ていなかった。彼は平原の闇を見ていた。いや、そこから現れた異装の人物を睨んでいる
 
「ほう、人の詩人の戯言が真であったとは。はっ、面白いではないかぁ」
 
 面白いと言いながらも、激しい怒りを感じる声だった。彼はすでに青年のことなど忘れているようだ。しかし青年もまた、光景に意識を奪われる
 現れたのはゴブリン。頭部にマスクのような紋様がないことからここイリアのゴブリンではなくどうやらウルラ大陸側の種であるようだ。遠く東の国のゆったりとした衣装を纏、大刀を担いでいる。その足元には巨人が二人倒れて・・・いや、ひとりだ。胴を断ち切られたその様に、一瞬、青年の目には二人に見えたのだった。草原を紅く染める水溜りに、滑(ねめ)った音をたて、怪物は歩みを進める
 
 びちゃり、と
 
「うおぉぉおおおおおおぉおお!!!」
 
 歩みの先に居たジャイアントが彼の背丈ほどもある戦斧で、猛りを共にゴブリンを薙ぐ。その矮躯など跡形も無くなるかのような一撃。しかし、ゴブリンは大刀の刃で受け流し、斧は頭部を掠めたのみ。勢いをそのまま流される形になった巨人は大きく体勢を崩し、膝をつく。違う。巨人の足は膝の上を大きく切り裂かれていた。倒れたのはそのため。戦斧をかわしたその刃はその流れのまま、剣先にて相手の足を切り払ったのだった
 
「おぉお、ひゅ」
 
 呻きをあげることも巨人には許されなかった。倒れこむことで「絶好の」位置に来た顔面を、大刀で切り上げられたのだ。漏れる呼気、そして噴出す紅
 
「手を出すなっ!・・・そいつは俺が片付ける」
 
 仲間達を制止し、彼はゴブリンのほうへとゆっくり向かって行った。離れていくその後姿に、青年は安堵と、何か別の感情が沸くのを感じたのだった
 
 
                               ひとつ葉、終劇   そして、双葉へ

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ところで、

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暗濡 2008/04/17 2536

【㈲駄スレ警報】今日は懺悔

+1
ハヤミ_cic 2008/04/17 1919

ギルドマークのつけ方教えてください><;

+8
黒曖羅 2008/04/17 4047

ゴブリン侍2 ~三葉~

+1
ネカマのてあ 2008/04/17 1469

公式にお知らせが出たようです

+7
月影水花_rua 2008/04/17 4189

※元の記事は削除されました。

       

[返事] 交番行って来た

藤森百合 2008/04/17 748

スレ乱立って言わないで

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架紅絹瑠 2008/04/17 1817

ま、何はともあれ

のはら 2008/04/17 1346

あちょ・・・・・はいれね・・・

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Baldy_mar 2008/04/17 1358

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reona_mar 2008/04/17 2463

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とらべらー_mor 2008/04/17 3706

はいれたぜ

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赤まむし_tar 2008/04/17 2585

だから

test0002 2008/04/17 1340

鯖繋がらない(;w;)

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ミュセ_tri 2008/04/16 8532

[返事] 鯖繋がらない(;w;)

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アレッツ_cic 2008/04/16 2185