自由掲示板

願いの種(小説)
木刀狼 08/02/25 18:57

諸君、私は木刀が大好きだ。
 
みんながミミックだの昇段だので慌ただしい中、流れをぶった切って小説だ。
しかも続き物。
気になる人は前回の書き込みを検索してくれるとありがたい。
では、駄文スタートだ。
――――――――――――――――――――――――――――――
彼女は歩いた。
疲れを知らないかのように、早足で。
答えを知っているかのように、まっすぐに。
彼女の歩く速さに、僕は小走りでついていく形になる。
 
陰る雲が、空を灰色に覆っていた。
息が切れるのが、胸の苦しさが、一体「何のせい」なのか分からなくなってきた。
単に、酸素を供給する為?
空を覆う分厚い雲の、蒸し暑さの為?
彼女が、嘘をついていた為?
優しそうな彼女の、寒気すら感じる表情の為?
全部かもしれない。
全てが入り混じって、渦巻いて、僕の心にがんじがらめにしている。
不安と恐怖と、そして若干の好奇心を追い払えないまま、僕はロザネの背中を追いかけた。
 
意識がはっきりとしたのは、もう夕暮れのころだった。
橙色の太陽は全く見えず、雲もよく見えないほど暗かった。
本当に「気づいたら」だった。
黒く、底のない穴と錯覚するような海。
気づいたら、僕は船に乗っていた。
彼女を追いかけるのに夢中になって、しっかりと覚えていない。
いつ乗船券を買ったのかさえも、だ。
彼女を見る。
姿勢はまさしく「直立不動」ってやつだろう。
目も動かず、ただまっすぐ前を見ていた。
いや。いや、もしかしたら、何も見ていないのではないか。
心の奥底で。
ゆっくりと、僕が当たり前のように思っていたことが、揺らぎ出していた。
 
またも眼下に広がる野原。
だけど、僕には全く違う光景に見えた。
夜のイリア大陸は、曇天のせいなのか、ひどく不気味だった。
それでも彼女は進んでいく。この広大な土地を馬にも乗らず、徒歩で。
気持ちの悪い汗が、僕の背中にじっとりとまとわりついた。
「さあ、ここよ。」
彼女は、僕に口だけで微笑んだ。
僕の目に映った光景。
そこには、一人の男が僕らに背を向けて立っていた。
苔の生えた、墓標の前に。
「ウェランよ。彼がウェラン。」
彼が、死んだはずの「ウェラン」?
やっぱり、死んでいなかったのか?
頭の中を、疑問符が埋め尽くした。
それでも彼女は微笑んだまま、動かなかった。
話しかけてみようか。
そうだ、話しかけよう。
彼女は固まっている。おそらくだが、聞いても答えてくれなさそうだ。
僕はゆっくりと、男の後ろ姿に近寄った。
「あの~……。」
無反応。
「すいません……。」
徐々に距離を近づけていく。
無反応。
ゆっくりと手を伸ばす。
「あのっ」
そして僕は男の肩を叩いた
――はずだった。
手はいともたやすく「男」を裂き、そして通過した。
抵抗も、なにも感じられず。
まるで……。
まるでその男が「人間」ではない証のようではないか。
 
「あ……。」
勢いなんて全然なかったはずなのに、僕は差し出した手から地面にへたり込んだ。
声にならない声。それが、自分の声帯から出たのに気づかなかった。
男はゆっくりと立ち上がり、肩越しに僕……いや、ロザネを見た。
「ロザネ……。」
すっと、ウェランが振り返る。
短い茶髪、赤い革製の鎧。
太い指に精悍な顔つきが、彼の強さを物語っている。
「ウェラン。」
ロザネが、ゆっくりとウェランに歩み寄る。
「やっと……やっとね。」
やっと、という言葉が、なぜか僕を不安にさせた。
「ろっ……ロザネさん……! これって……。」
僕はロザネさんの両足に手をかけた。

だけど――すり抜けた。
前のめりになった僕は顔面から地面に突っ込んだ。
すぐ起き上がったものの、鼻に鈍い痛みを感じる。
当たり前に思ってたこと。彼女は人間だと言うこと。
その揺らぎが大きくなって、そして砕けた。
彼女も、幽霊だったのだ。少なくとも、僕と会う前から。
彼女は、僕の、たったいま自らをすり抜けていった両手を見て、囁いた。
「ありがとう……。」
儚げな笑顔。さっきまでとは別物の、悲しい笑顔。
「私がやっと彼に会えたのは、あなたのおかげ。
あなたの一生懸命な姿を見て、ああ、わたし何やってるんだろう。
人のために一生懸命になれる人がいるのに、何でわたしは自分だけのことしか考えてないんだろうって。」
ロザネは、うっすら目に涙を浮かべた。
 
わからない。
わからないわからないわからないわからないわからない。
何の話なのか。なぜ幽霊なのか。なぜあなたが泣いているのか。
そしてなぜ、僕は泣いているのか。
「わたしね、彼を殺したの。」
僕の思考の渦を、さらに渦巻かせる彼女の声。
「……ロザネ。」
ウェランが、彼女を止めようとする。
「きっかけはくだらないものよ。喧嘩とか、不仲とかじゃない。
一緒に狩りをしていたところで、わたしが熊に襲われて、彼が助けてくれて……。」
制止の声も聞かず、彼女はたどたどしく、不安定な声で説明を続けた。
「あの後、わたしはすごく後悔した。
わたしがもっと注意を払っていたら、彼は死ななかった。」
彼女の涙が光を含んで落ちていく。
「そして、私は自殺した。これで、地獄にいけると思った。
――でも、本当に消え去ることはできなかった。霊魂だけが残った。
そして死んだ瞬間、声がしたのよ。
『お前は罪を償わなければならない。魂だけの身を愛しい人に殺されて、罪を償え。』って。」
「ロザネ。」
もう一度、ウェランが呼びかける。
 
『わたしね、君が気づいてくれて嬉しかったんだ。』
ああ、そうか。
 
「わたしは、死にたくなかった。まだ自分を甘やかしてた。
『また死ねば、地獄に行ける。でもあなたがいるこの世界から、私は消える。
でもそうすればあなたに罪を許してもらえる。
でも、でもっ』、て考えて、意味がわからなくなってた。」
彼女の独白は続いた。
僕の頬を、ぬるい雫が一筋、こぼれ落ちた。
「あなたに会えたのは、本当に嬉しかった。
霊魂だから、誰にも気づかれなかった。そんな事が、永遠に続いて。
だから、あなたに会えて、話して、手伝ってもらったのが、本当に嬉しくて……」
目の前が滲みだした。次々と、涙が頬を滑り落ちた。
「――わたしは、やっと死ねるの。
死んで、地獄に行って、永遠に苦しむ覚悟ができたの。」
そういって彼女は、一人の剣士の霊魂と向き合った。
 
『久々に会うんだから……覚悟する期間が欲しかったのかな』
そういうことだったのか、ロザネさん。
 
「ウェラン……私を殺して、地獄へ逝かせて。」
自らを嘲笑するような、笑み。
 
『もう、覚悟はできたわ。彼に謝る覚悟も。』
あなたの言っている事は、こんな、――こんな、『悲しい』意味だったのか。
 
ウェランは、黙っていた。
下唇を噛み、何かを堪えていた。
「ロザネ。」
「あなたに殺されるなら、わたしは……」
「ロザネ……。」
「わたしは、全然悲しくないから、おねが――」
「ロザネッ!!!」
ウェランは、大声で叫び。
彼女に抱きついた。
抜刀するでもなく。
刺し殺すわけでもなく。
右手を肩から背中にまわし、左手で彼女の後頭部を抑え。
まるで――
大切なものを、離さない子供のように。
 
「なんでだよ……、お前、なんでいつも……っひぐ、俺のこと、考えてくれてて……」
子供のように、嗚咽して、肩を震わせて。
「なのに、最後のお願いが『殺せ』かよ……ざっ、けんな……。
自分のことしか考えてない? 嘘つくな……バカ野郎……。」
彼は、泣いていた。
「なん……で……?」
彼女が、ぼそりとつぶやく。
「わたしのせいで、死んだんだよ……? 憎んで……ないの……?」
「そうじゃ、ありません。」
そんな言葉が、僕の口をついた。
袖で涙をぬぐう。
言わなければ。僕の知っていることを。
なぜか今は、涙は出なかった。
顔が熱い。
耳も熱い。
手にも汗をかいているだろう。
喉なんかもうからからで、唾を飲み込むのすら少し痛い。
だけど涙は、止まっていた。
「彼は、ウェランさんは、あなたを憎んでなんかいません。」
とにかく、僕の知っていることを伝えなければという一種の責任感が。
そして、この二人を、悲恋のまま終わらせたくない気持ちが、涙を止めていた。
「むしろ、逆です。彼は、最後まであなたを愛していた。そして、今も。」

ポケットの中の潰れた紙が、二人を救ってくれると信じた。
「これを、見てください。」
そこには、ひどく不格好な字で、彼女を気遣う言葉が書かれている。
「これは、願いの木にくくり付けられていた、彼の言葉です。
『アイツと仲直りしたい  ウェラン』と。」
僕の声が、震えている。
「願いの木は、ここ最近に現れました。
少なくとも、墓石に苔が生えるほど前ではありません。」
僕の頭の中で、会ったばかりのロザネの声が聞こえた気がした。
なぜか、僕は微笑んだ。つまりは、そういうことだったのだ。
「つまり、彼は……死んだ後でさえ、ロザネさんを愛して……いたんです。」
『人探し。もう全然会ってないの。ウェラン、っていってね。』
なぜ彼女は、自らを殺す相手を、探していたのだろう。
それはたぶん、彼女もウェランを、恋人を愛していたのだから。
謝らない事が、死ぬよりも辛かったから。
死んでから、そのことが分かってしまったから。
言い終わったあと、さっきまでどこにあったんだろと思うほど、涙があふれ出した。
 
ウェランが、ロザネをさらに強く抱き締めた。
「お前のせいな訳ないだろっ……おれが強けりゃ、お前も死ななかったのに、って……ずっと思ってきた。」
ウェランは、ロザネの頭を押さえたまま、背中にまわしていた右手を解き、腰の剣を抜いた。
「お前を独りで逝かせない。お前が死ぬなら、俺も一緒に死ぬ。」
右手のロングソードを、ロザネの背中に突き付ける。
銀の刀身は、人の身体二つ貫くには十分な長さだ。
ロザネは、さらに涙を流した。
「――ダメだよッ! 自殺なんてしたら、あなたも地獄に逝っちゃう!」
 
 
「地獄も、世界も、まして俺なんざどうでもいい!! ロザネといられないなら、どこにだって意味なんか無い!」
 
 
彼が叫んだのと、剣が二人を貫いたのは、ほぼ同時だった。
血も出ず、二人が苦痛に顔を歪めるわけでもなく。
二人の体は、光の粒となって、どこかへ消えていく。
ほの暗い闇の中、二人だけが、やさしい光を散らしていく。
「……本当に、よかったの? ウェラン……。」
「……そう思ってんだったら、笑ってんじゃねえよ、バカ野郎……。」
「――ねえ、最後のお願い、考えた。」
「なんだ。」
「最後のお願い。キス、して。」
無言のまま、二人は一瞬唇を重ねる。
その顔は、本当に幸せそうな、本当の笑顔だった。
僕の胸を、温かい何かが満たしていった。
「……子供。ありがとうな。」
ウェランが、僕に微笑みかける。
「ありがとう、きっと、また会えるわよね?」
ロザネも、泣きながら笑った。
なんて答えればいいのか。
きっと、さっきまでの、生まれたばかりの僕なら、何を言えばいいのか分からなかったろう。
でも今は、なぜか僕の中に、一つの答えが浮かび上がっていた。
「二人とも、笑った顔のほうが似合ってますよ。」
僕も笑いながら答えた。
胸の中のもやもやした気持ちが、すっと晴れていく。
なんで泣いてたのかも、なんで今笑っているのかも、今なら分かる気がする。
さっきまで曇っていた空に、イウェカが煌いていた。
願いの紙を握りしめて、僕は祈る。
お願い。
君たちの行く先へ、二人を――。
二人はゆっくりと、光になって崩れていった。
その最後まで、笑って、見つめあいながら――
願いの紙と共に、昇華して天に昇っていった。
 
   ※   ※   ※
 
「ほう……。」
『きーちゃん』の視線が、僕の顔と、わずかに発芽した種を往復する。
「『お願い』、叶えられたみたいね?」
「ええ、まあ。」
「よし、願いの木としては合格、だねっ!」
そう言うが早いか、素早く頭に顎を乗せてぐりぐりする。
「うわはっ!」
「あっ、そうだたねちゃん。ついでだから、願い事書いてみる?」
「……願いの木の僕が、ですか?」
「うん、まあ、そうなるわね。」
そんな会話がなんか可笑しくて、つい笑ってしまった。
「なに? 書かないの?」
「そりゃあ……」
もちろん、と言いかけたところで止めた。
「――いえ、やっぱり書きます。」
「そう、んじゃ、これ紙と鉛筆。」
彼女がどこから出したか、紙と鉛筆を僕の頭上から落としてくる。
さらさらっと字を書いて、
「んじゃ、これでお願いします。」
と手渡した。
「……たねちゃんらしいわね、じゃ、吊るしてくるわ。」
「はい。」
まだまだ、この世のことはあまりわからない。
最低限の言語やらはわかるみたいだけど、分からないことは比較にならないくらい多い。

でも、それは知っていける。
ゆっくりゆっくり、この世界のみんなのことを知って。
そして、みんなの願いをかなえよう。
もう迷いはなくなっていた。
あの時の二人の笑顔が、今も心に残っている。
あんなに気持ちのいい笑顔を、みんなに与えられたらどんなに楽しいか。
そのことを考えると、僕の心の奥がうずうずと騒ぎ出した。
「さっ、これからどんどん働いてもらうわよ! 覚悟しなさい!」
「はいっ!」
明日には、僕の願いの紙が昇華するだろう。
その時を心待ちにして、僕はまた、願いを叶えに行こうか。
 
『二人が、天国で幸せに過ごせますように。   願いのたね 』
――――――――――――――――――――――――――――――
しょっぱなからここまで呼んでくれた方に最高級の土下座をしておこうと思う。
readが1000行けばいいなぁと思いつつさっさと逃げるか。
いや、友人がいない隙を見計らってPC無断使用で書き込みしてるんだ。
ではまた。

カフェチョコ_tri クッキー抹消も忘れずに(  08/02/25 19:18
木刀狼 クッキーもわからないそんな人生。 08/03/02 18:35
羽貫ミヨシ あ……危なく涙が流れるところでした。 ……違います。これは目薬です。うぐっ。。。 う…………ウワァァァン!! 目薬が溢れてきます;; 08/02/25 19:53
木刀狼 ちょうど目薬切れた。 ちょっと待ってろ今コップ持ってくるから( 08/03/02 18:38
アノロク つ「その場復活」 そうさ!空気読まずにマビだからこそできることを言ってみた!!!(殴打 08/02/26 01:26
木刀狼 ロザネ「きゃあああ!」 ウェラン「ぐああああ!」 ロザネ「さて、ゾンビアタックしましょうか。」 ウェラン「そうだな。」 ……ダメだろ。 08/03/02 18:40
灯舞 たねちゃんは、今後もどんどん働くんですよね? 楽しみにしています。 08/02/26 12:06
木刀狼 もしかしたら、灯舞さんの願いを叶えてるかもしれんぞ。 08/03/02 18:42
件名 名前 日付 閲覧数
 

各掲示板の用途について

2005/03/23  
 

MML関連の書き込みに関する補足

2005/03/04  
 

自由掲示板のご利用について

2005/01/17  

日本の昇段アップデートお祝い申し上げます!?

+9
はらはらま 2008/02/25 4150

アタック一段(σ・∀・)σゲッツ!!

+7
イノセンス_mar 2008/02/25 4839

誰もつっこまなかったけど

+72
ソロウ_mar 2008/02/25 5037

昇段試験の内容を知りたいか?

+6
天樹フィア 2008/02/25 5253

見たらあかんよ?

+10
SEICA 2008/02/25 2408

願いの種(小説)

+8
木刀狼 2008/02/25 1140

昇段(私事追記

+20
蒼翠_cic 2008/02/25 4844

昇段試験

+42
リナム 2008/02/25 7013

言葉に出来ない痛み

+22
シェアラ_rua 2008/02/25 2298

箒についてアンケート

+21
懺龍 2008/02/25 3180

ミミックの使い方

+6
岡田匠 2008/02/25 4620

ミミック購入→世界樹Ⅱ購入→プレイ→シカ購入

+1
まっけ_cic 2008/02/25 4526

ちょっと聞いて!なお話

+11
千浩 2008/02/25 2779

ちょっと工作

+8
フレックス 2008/02/25 2408

次回の期間限定ペット。

+16
neoss 2008/02/25 4361

あったかいです

+26
蒼翠_cic 2008/02/25 3412

なんと

+2
アレンビー_rua 2008/02/25 1904