自由掲示板

今更なもの(小説)
木刀狼 08/02/10 18:30

諸君、私は木刀が大好きだ。
 
ある人が「ほのぼの感が好き」と言ってくれたが、
ほのぼのじゃないんだ、gdgdなんだ。
もうなんか異様に長いが、読んでくれるとありがたい。
――――――――――――――――――――――――――――――
ぼんやりとした意識。
ここはどこだろう。
突然生まれた『自分』に戸惑ってしまう。
『僕』は誰だろう……?
 
「……よく、『生まれて』きましたね。」
「!?」
突然聞こえた声に、僕は振り向いた。
白く曇った霧の、一部分だけが晴れて、そこに木が見えた。
霧の中の大きな木は、僕にまるで家族のように暖かい印象を与える。
「だれ……ですか?」
僕は木を見上げた。
「……私は『願いの木』、あなたの母親。」
「……じゃあ僕は、願いの木の子なんですか?」
「ええ、そう。」
ゆっくりと、落ち着いた声。
声は、一拍おいてから続けた。
 
「あなたはこの『エリン』の地に生まれました。
あなたには、ここで人々の願いを叶え、立派な『願いの木』になってほしいのです。」
「……へ?」
願いの、木?
思わず間抜けなリアクションをしてしまった。
まさか、まさかだが、僕は木の種なのか?
「あ、あのぉ~……それって、どういう」
「それでは、今から1つ『願い』を叶えてきて下さい。
拒否権はありません。」
「え? いやちょっとまっ――
それはいくらなんでも無理やりすぎるだろう。ていうかなんだよ、唐突過ぎるだろ。
そんなことを言おうとした時。
 
   ※   ※   ※
 
目が覚めた。
 
――目が?

霧が晴れていく。
目の前に願いの木があるのはさっきと同じだが、
360度、ぐるりと回って驚いた。
緑色の大地。走り行く馬。地平線。水溜り、鳥、空。
すべてが初めて見るものでいっぱいだ。
水溜りを覗き込むと、(おそらく)自分の姿が見えた。

さっきまで無かった自分の『身体』。
身長や体格でいうと、10歳前後だろう。
装飾の毛がついたローブに覆われているものの、背が小さく、華奢なのはわかった。
濃い紺色の瞳、金色の短い髪は、頭頂部だけアンテナのようにはねている。
えーと。
自分で言うのもなんだが……、
「なかなかカッコいい――」
「う~~~~んっ、可っ愛いぃっ!!」
 
……。
もちろん僕の声じゃない。たったいまカッコいいって言ったし。
「いいわあ、好みだわぁ、やっぱ私ってセンスがいいのかもね♪」
僕が頭を上げると、目の前の女の人がそんなことを言っていた。
「ん。おはよ。」
「あ、はぁ、おはようございます……」
誰だろうこの人?
赤い眼に茶髪のポニーテールが、元気そうな印象を抱かせる。
彼女は黄色い格子模様のスカートとショールを揺らし、こちらを覗き込んだ。
 
「ほら、ボーっとしてないで行ってきなさい。さっき説明はしたでしょ?」
「……え? えぇ!? まさか!?」
「何? なんか文句ある?」
「だ、だってこんな、えーっとその……」
「見た目は関係ないでしょ? あたしがこの『願いの木』の精霊。きーちゃんでいいよ。
あんたは、そこ。」
母親(でいいのだろうか、見た目的にはお姉ちゃんのほうがいいくらいだ)は、
僕の足元を指差す。
「……これ?」
僕も足元を指差した。
指先にあるのは、『種』だ。
見事なまでに小さい。これ以上小さい種はタンポポかそこらではないかというほどだ。

もう一度聞く。
「これ?」
「そう、これ」
即答。
「ぷぷぷ……さすがにちっちゃいわね……」
「ぼ、僕は何をすればいいんですひゃっ!?」
さっさと用を済ませようと早口になったせいか、
舌を噛んでしまった。なんかますます情けない……。
「そうね、そう、この人の願いを『こっそり』叶えられたらおっけーかな?」
「……こっそり?」
彼女は木にくくり付けられた紙の一つを無造作にちぎり取ると、
僕に投げた。

「そう、『こっそり』。
こういうのって、自分の見ていない所で叶えられてないと、なんだか空しいでしょ?」
「そんなもんですかね。」
「ま、自分から『僕は願いの木の種です』とか『あなたの願いを叶えます』とか
言わなければいいの。簡単でしょ?」
なんだか、あまり分からない。
確かに僕の目の前に『願いを叶えてくれる人』がいたら、ずっとその人に付きまとうだろうけど。
そううつむきながら考える僕の額を、つんっと人差し指で押し上げられ、
「んじゃ、いってらっしゃい。たねちゃん♪」
「たねちゃんって……。」
 
あだ名は心底気に入らなかった。
だけど突っ込んでもキリがなさそうだ。
僕は紙を握りこんで、さっさと歩き始めた。
 
   ※   ※   ※
 
『アイツと仲直りしたい  ウェラン』
紙に書かれていたのは、不格好に書かれた太い字、その一行だけ。
「なんで僕がこんなことしなきゃならないんだ……?」
つい独り言が漏れる。
頭の中では分かっている。
確かに僕があの『種の精霊』である確証はない。
だけど、彼女、『きーちゃん』の物言いには、これ以外あり得ないという自信が満ちていた。
それはなぜか、僕を十分説得させるに至る。
ま、それに今はすることも特にない。
嘘だったとしても、別にいいかな、程度に思っていた。
そう物思いにふけっていると、船が出港するまでそう時間はかからなかった。

船が動き出した、その時。
「あら、あなた。」
「はい?」
突然、隣から柔らかな声がした。
「……。」
そこには、僕を見て、いや、それはもう凝視と言えるくらいにこちらを見ている女性がいた。
腰まであるピンクのロングヘアーは見事に滑らか、肌の白さはまるでそれ自体が光っているかのようで、
薄紅色の薔薇を思わせた。
美しい人だが、深い紫の瞳孔はこちらを向いたまま、微動だにしない。
ちょっと怖い……、ていうかいつまで見てるんだろうか?
「な、なんですか?」
「――可愛いわね。」
「……。」

第一声それかい、とでも突っ込んでやりたかったが、
呆気にとられたのと、初対面にそれは失礼過ぎるだろうと思って、
(さらに、さっきのきーちゃんのセリフも思い出して)口をつぐんだ。
「やっぱり『可愛い』ですか?」
「ええ、それはもう。女の子?」
「男の子です、たぶんですけど。」
「たぶん?」
……どうやら僕の感性は、普通の人とすこしズレているらしい。
「でもあなた、そんなに若いのに一人旅?」
「……そうですね。」
まったくもってその通りだ。
誰か、生後1時間以内で旅に出た猛者がいるなら、ぜひ名乗り出てくれ。
食事にでも招待したい。
 
そんな僕の思いも知らず、彼女は
「そっか。楽しそうだね。」
と楽しそうに笑った。
「全然。」
「……わたしと同じようなのかな。
好きで旅に出てるわけじゃない、っていうの。」
「そうなんですか。」
そう言うと彼女は、すっと体を右に向け、手を後ろに組みながら遠くを見た。
「人探し。もう全然会ってないの。ウェラン、っていってね。」

手元で、紙のつぶれる音がした。
思わず握りしめた手の中に、まだ紙を持ったままなのに気がついた。
まさか、こんなことがあるなんて。
僕が『生まれて』初めてみた平原は、とてつもなく広かったが、
世界というのはその平原より小さいのかもしれない。
「あっあのッ!」
「ん? なあに?」
一緒に探せば、早く見つかるかもしれない。
その思いが、僕の心を駆り立てた。
「もしよければ、僕を連れて行ってください!」
「ん……いいけど、何で?」
不思議そうな表情を浮かべる彼女。
「え~~っと……。」
しまった、言い訳を考えていなかった。
突然の手がかりに焦りすぎた。えーっと、ばれちゃダメなんだよな。
うーんと、うーんと。
焦っている時に限って、考えっていうのは纏まらない。くそ、何してる頭め。
 
僕が慌てているのに気づいたかどうかは分からない。が、
「……つまり、一緒に探してくれるっていうこと、よね……?」
「え、あ、はいそうです。」
すると彼女は突然僕に飛びついてきた。
「ッありがとう! 探してくれる人も増えたし、なんだか今日中に見つかりそうな気がするわ!」
ぐりぐりと頬ずりをされる。滑らかな肌は気持ちよかったが、圧力が半端ではない。
「うぇ……あの、その……」
ぐりぐりぐりぐり。
「わたしはロザネ、よろしく! くぅぅ可愛いっ。」
ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり。
(重いぃぃぃぃぃぃぃ……!!)
 
僕は船が着くまで、呼吸が止まるのではないかと思う位にのしかかられ、頬ずりをされた。
――――――――――――――――――――――――――――――
はい、続きます。
とりあえず土下座をしておく。

羽貫ミヨシ か、会話の使い方が上手すぎる…… 前と比べて情景描写も増えていて、より楽しんで読めました。 心理描写も面白く書かれていて、テーマも独特。凄すぎます…… いちゃもんつけようと思ったのにクソウ(殴 >拒否権はありません ここから僕は貴方の虜になってます(何 08/02/10 20:55
木刀狼 次のを楽しみにしてください。 拒否権はありまs(ry 08/02/10 21:26
件名 名前 日付 閲覧数
 

各掲示板の用途について

2005/03/23  
 

MML関連の書き込みに関する補足

2005/03/04  
 

自由掲示板のご利用について

2005/01/17  

TVが・・・

+2
ロミナ_rua 2008/02/11 1770

見た事ないタイトル・・・

+13
ラカド 2008/02/11 4779

詩集限定・おすすめの本を紹介するスレ

+14
すぺしねふ 2008/02/10 1954

マビノギが起動しない:なんだか分からないので、教えてください

+10
戦艦長門_mor 2008/02/10 2231

京急・・・

+5
ジョースター_ru 2008/02/10 2162

DVD!DVD!

+15
爆乳人妻 2008/02/10 1741

デルのカタログが届いたのだが

+18
権三郎挫衛門 2008/02/10 2444

美少女カードゲームLyceeスレ

+30
reona_mar 2008/02/10 2922

マナトンネル

+5
たーとるマン 2008/02/10 2080

しつこいようだけど

+304
蒼空のギャ 2008/02/10 4885

[返事]しつこいようだけど

+303
たむけ屋 2008/02/10 1941

おめでとう

+154
イーギー_cic 2008/02/10 1540

[返事]しつこいようだけど

+18
シクローネ_tar 2008/02/10 1181

最近読んだ本で・・・

+28
amalilis123_tri 2008/02/10 1378

昨日のガンダム

+41
蒼翠_cic 2008/02/10 2539

ケイタイの料金プラン・・・

+7
ロミナ_rua 2008/02/10 1408

今更なもの(小説)

+2
木刀狼 2008/02/10 881