自由掲示板

ツンデレの方程式・後編(小説
ダスキ 08/02/04 21:26

夜のセンマイ平原は暗く静かだ。月明かりが射しているいるというのに、他の平原に比べてどこか薄暗いのは、この地で故郷に還ることなく果てた者達の魂がそうさせているのだろうか。
…そんな詩人な思考をしながら、俺は待ち合わせ場所でフレッタを待っていた。
「…遅い。…いや、そもそも夜ってだけで、待ち合わせの時間は決めてなかったな…」
ホー、ホー…と闇の中で梟が鳴いている。ザワザワと、夜風に煽られて木々がざわめく。…ん?今あそこの木の影のトコロに誰かいた様な…。
「うぅ…やだなぁ…俺、こうゆうの苦手なんだよなあ…」
しかも、神経が過敏になっているせいか、木々のざわめきが誰かの囁きに聞こえる気がする。木の枝が得体の知れない生物の手に見える。
「そういえば…元いた世界であったな…そんな感じの歌」
なんだっけ…たしか…ええーと…あぁそうだそうだ。
「オトーサン、オトーサン、魔王がいるー…♪」
 
一人で歌い始めた『魔王』が二番目に突入し、少年が絶命する寸前のところで、後ろから声が掛かる。
「…貴方何言ってるのよ。お父さんがどうかしたの?」
…また恥ずかしい場面を見せてしまった。
「いや、これは…」
「…まぁ、いいわ。貴方が変なのは元からだものね」
あぁ…!すっかり俺を見る目が変わっている…!いや、まぁ元からロクな印象はなかったと思うけど…!
「あははは…あ、ハイこれ。頼まれてた首輪ね」
力無く笑い、首輪をフレッタに渡す。すると、彼女は驚いたような表情を見せた。
「…あの図面でよく作れたわね」
「え?」
「な、なんでもないわ。…それより、今日は…バレンタインよね」
・・・む?
「その…貴方には少しだけだけど、お世話になってるし、その…だから、チョコを…」
…え?あれ?これは…ひょっとして?もしかして、そうなるのか?
「あげようと…思ったんだけど」
あれ?
「…ちょっと、失敗しちゃって…まともなチョコが作れなかったのよ」
・・・あー。そうか、そうか…。ツンデレ=大体料理が下手だもんな…。
「いや、いいよいいよ。ホント、その気持ちだけでも十分嬉しいしね」
少し残念だったけど、今言った言葉に嘘は無い。それに、彼女の薬指に巻かれていた包帯…恐らくあれは火傷だろう。その努力の跡を見れただけで、俺は十分満足だった。
つまり、フレッタは俺に言われてバレンタインを思い出し、カバンに入ってた超適当な書きかけ図面を渡して俺に首輪を作らせてる間にチョコを作ろうとしたワケだ。
 
「でも…年に一度のバレンタインだし…」
「いや、本当に気持ちだけで十分嬉しいよ。チョコは…まぁ、店で買って食べればいいしさ」
そう冗談を言って俺は笑う。すると、彼女は…
「…チョコの代わりって言ったらなんだけど…」
「?」
 
「私の…キス、じゃダメかしら?」
 
なんだって?
「…なんだって?」
思わず思考そのままで訊ねてしまう。
「か、勘違いしないでよね!このまま義理チョコも渡せないなんて、私のプライドが許さないって言うか、なんて言うか…と、とにかく!そうゆうことよっ!」
あれ?これは?ん?またいつの間にかトリップしてしまったのか?いや…それともこれは魔族の罠か!?おのれ!キホール!その手には決して乗らんぞ!!
「…イヤ、かしら?」
「いや、全然イヤじゃないです」
即答だった。疑いや疑問は一瞬で頭の中から消し飛んでいた。
「じゃあ…」
そう言ってスッ…と彼女は目を閉じ、顔を軽く上に上げる。
「い、一回だけよ…」
待て、落ち着け俺。振り返れば今日は散々な目にあってばっかりだったじゃねえか。つまり、それらは全てこの時のために在った伏線だったってことだ!いや!まだ解らねえ!俺の事だ!直前に緊張のあまりB爆弾を誤爆させちまうかもしれねえ!!このイベントはそのための伏線かもしれない!!あぁ・・・!俺は・・・!!どうしたら…!というか、何時フラグが立ったんだ…!?あ、あれか!?穴に落ちてたラブを助けた時か!いや、黒ヒグマに襲われてるところを庇った時か!?あの時は本当に死ぬかと思ったが…
 
俺が思い悩み、思考錯誤していると
「は、早くしなさいよ…私だって恥ずかしいのよ馬鹿ぁ…」
…よし。…俺の覚悟は決まった。
そっとフレッタの肩に手を乗せる。
「ぁ・・・」
と艶めかしい声を出された時にはダッシュでどこかへ逃げたい気分になったが、なんとか必死で堪え、軽くこちらに引き寄せ…ようとした、その瞬間。
ゾクッというかゾグッ!という感じに一気に全身の毛が総毛立つ。
(…!?殺気!!?)
とっさに顔だけで辺りを見回すが、平原に異常はない。しかし、未だに肌にチリチリと殺気は感じる。
…なんなんだ。一体。
フレッタの様子を見ると、相変わらず顔を赤らめて目を閉じている。どうやら、異変に気付いていないようだ。…そうか、これは俺が必要以上に緊張しているせいで、あるはずも無い気配を感じているんだ。
そうと分かれば何にも恐れることは無い。しっかりしろ俺・・・!
気を取り直し、手に軽く力を入れてこちらに引き寄せて・・・なんだか距離が縮まるのに比例して、殺気が強く…いやいや、気のせいだ。引き寄せて・・・引き寄せて・・・。
吐息もかかる距離、というのはこうゆうのを言うのだろうか…。
脳内では架空のN○SA局員がお祭り騒ぎをしている。
「オイ!寝ている奴らを叩き起こせ!世紀の瞬間だ!!」「ハッ!あの野郎マジでやりやがったな!畜生!ヤーホー!」「やっとツキが回ってきたんじゃねえか!畜生このオイシイトコ取り野郎が!」「モニター完了!いつでもいけるぜ!?」
あぁ!手荒い祝福ありがとう!!さぁカウントを開始してくれ!
ファーイヴ!フオゥー!
殺気はもはや肌が痛くなるほど強くなっている。
スゥリー!トゥー!
だが!もはやこの距離でそんなの関係ねぇ!!
ワン!
今その唇をおおおおおお…!!
 
バズン!(クリティカル音)
 
その瞬間。
俺には何が起きたか分からなかった。というか、自分が吹っ飛んでいるということに気付くのに数瞬かかり、自分がマグナムショット(それも特大)を食らったのだと気付くのに数秒掛かった。そしてHPの残量は0だ。
「…ぅぅ」
一体…なにが…というか誰が…。
倒れたまま首を横に倒すと、遠く離れた木の陰に隠れる人陰を見つけた。
…誰だ。アレ…
遠くからフレッタが俺を呼ぶ声が聞こえる。
「……!……!しっかりしなさいよ!……!!」
遠のく意識の中、彼女の声に混じり、知らない誰かの声が聞こえた気がした。
 
「フレッタは俺の嫁」

 
あぁあれか…つまり…
ツンデレ=人気キャラ=俺(不特定多数)の嫁=抜け駆けは処刑
その考えを最後に、俺の思考は途切れた。
 
-終-

ルミナレイ ちぃぃぃ!!あと少しだったのに!! フレッタちゃんかわいいなぁ( *´∇`*) むむ、いかんいかん!私の嫁はアイラだった!! 08/02/04 21:33
フォウカス_mor てゐに決ってんじゃねーか! 08/02/05 01:24
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