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正義の種類(小説・Gネタバレアリ
ダスキ 08/01/31 00:52

聖堂アルバイトをしていた時だった。白いフクロウがいつものように手紙を運んでくる。内容はこうだ。
 
『大変申し訳なのですが、貴方にお願いしたい仕事があります。詳しい内容はいつものように彼女にお聞きになってください。 追記 大変辛いお仕事です。もしお引き受けにならない場合は、このまま手紙をフクロウに持たせてお返し下さい』
 
女神からの手紙…俺に選択の余地は無い。フクロウは俺をじっと見ている。
さっさと行け、とフクロウを手で追い払い、俺はエンデリオンへと話し掛ける。
「すいません、聖騎士の仕事が入ってしまって…すぐに準備をしなくてはならないんです。手伝うって言い出しといて申し訳ないのですが…」
すると彼女は気にしないで下さい、と言って笑った。彼女の笑顔にはいつも救われる。
「お仕事、忙しいみたいですね。あとのことは私がやっておきますから、こちらのことは心配しないで、頑張ってきてくださいね」
「本当にすいません。じゃあ、また休みの時には顔を出しますね」
「ええ、いってらっしゃい。余り無理はしないでくださいね」
短いやりとりを済ませ、俺はアルビダンジョンの祭壇へと向かう。
 
祭壇で手紙に同封されていた黒い羽を落とす。これがあの女の場所へと繋がるカギだ。
…目を開けると限りなく白い世界に俺は立っている。そして、その純白の視界に映る、黒い服に身を包んだ女。俺をこの世界へと引き込んだ女だ。
その女は俺を見ると、ニッコリと笑う。偽善者め。笑顔以外に表情を知らないのか。
「女神様のお願いを聞いてくださってありがとうございます。今回は辛いお仕事ですが…」
「能書きはいい。さっさと用件を言ってくれ」
俺は吐き捨てるように言いつける。
「…わかりました。では…」
 
言いつけられたのは、裏切り者の始末。最近聖騎士を裏切って姿を消すヤツが多くなってきている。今回はその『脱走者』の始末だ。…いや、正確には今回『も』だな。
 
「それで?なんでそいつは裏切ったんだ?」
「…私も女神様も全くわからないのです。しかし、聖騎士の力はとても強力な力。間違った道を歩めば闇の騎士となり、惨劇を引き起こしてしまいます。それは、闇の騎士と戦った貴方もご存知だとは思いますが…」
「…まぁいいさ。そいつのリストを見せろ」
そうして手渡された一枚の紙。似顔絵で見る顔はまだ幼さが残る。青年…そんな言葉がピッタリ当てはまる年頃だ。
「ランクは…ホーリーナイトか。この年でホーリーってのは大したもんだな」
それだけの力があるのだろう。そして、その力故に己の道へ疑問を抱いた…そんなところだろうか。
「それでは、私は新しい『適合者』を導かなければなりませんので、失礼しますね」
適合者…また『外の世界』から聖騎士候補を見つけたのか。
「…どうかお気をつけて、女神様のご加護があらんことを…」
そして、辺りがまばゆい光に包まれ、気付けば俺はアルビの祭壇前に立っている。
…またあの女はこの世界へと…名ばかりの楽園へと人を導くのだろう。導かれた者の手が血に染まるのを知っていても…。
「…魔女め」
 

月の光で辺りは大分明るい。涼しい風が心地よかった。
そんな中、俺は誰も通らない平原を見張っている。丘の上の木に背を預け、ジッと平原を見下ろす。
そして、ローブを着た二つの人影を視界に捕らえた。
 
「クソ…モリアンめ!もう追手をかけてたのか!」
茶色がかかった短い髪に、精悍そうな顔立ち。リストの顔に間違いない。
「レニ・ヴァリウスだな。女神を裏切った罪、償ってもらうぞ」
ほとんど棒読みでそう言うと、青年…レニはローブを脱ぎ捨て、帯剣していた剣を抜き放った。
「ふざけるな!裏切ったのは女神のほうじゃないか!何が平和だ!何が楽園だ!!この世界には楽園なんかどこにもなかった!!」
激昂し、続ける。
「もう嫌なんだ!何の意味も無い戦いで命を奪うのも…!魔族だって心は通じるんだ…!共存できるはずなんだ!」
共存…俺もそれをどれだけ夢見ただろうか。どれ程楽園を信じ、この手を血に染めただろうか。
「…言いたいことはそれだけか?」
「なんだと…!?」
「悪いな、ガキの妄言に付き合ってる程暇じゃないんだ。一撃で終わりにしてやるよ」
そう言って、俺は背中の剣を抜く。
レニは後ろの人物(誰かはわからないが、彼の仲間だろう)を自分の後ろに下がらせると、ジリジリと間合いを詰めてくる。
対する俺は剣を肩に乗せたまま動かず、彼が仕掛けるのを待つ。
…あと一歩で俺の剣の間合い、というところで彼は思い切り地面を蹴り、一気に距離を詰めてきた。そのまま横薙ぎに俺の身体を両断するであろう必殺の一撃を繰り出す。
「もらった!」
レニが勝利を確信し、吼える。
俺は彼の腕…正確には剣を握っている手を狙い、思い切り…蹴り潰す。
グシャリ、という嫌な音が静かな夜の闇に溶けて消えた。
「ぐぅっ…!?おおぉぉお!!」
「大技も相手を選べ。経験の積んだ相手に力押しでは通らんぞ」
激痛に怯み、突進が止まった彼の胴目掛け、思い切り剣を袈裟斬りに振り下ろす。
鉄が鉄を切り裂く嫌な音と共に、夜空に鮮血が舞う。
レニは信じられないと言った顔でこちらを見ていたが、やがて力尽きうつ伏せに倒れた。
 
剣を大きく払い付着した血を飛ばすと、もう一人の人影に声をかける。
「次はお前だ。報告にはなかったが…コイツと一緒にいるってことは仲間なんだろう。どの道、見られた以上生きて還すわけにはいかない」
彼はレニをジッと見詰めたまま動かない。やがて、レニの血が足元まで来た時弾かれたようにレニに駆け寄った。
「レニ…!レニ…!!返事して…ねえ!レニ!」
声で女…それもまだ成人していないであろうことがわかる。
必死でレニを起こそうとしている彼女に近寄り、頭のフードをどける。
夜闇に全く色褪せることのない、見事な金髪。そしてそれより目を引くのは、血のように紅い目…。
「サキュバスか。見たところまだ魔力にも目覚めてないようだが…一人前にコイツを誘惑したみたいだな」
それを聞くと彼女はキッとこちらを睨みつける。
「違うわ!レニは…レニは殺されちゃったお姉ちゃん達の代わりに私を守ってくれるって…!私が戦うのイヤだって言ったら自分も同じだよって…!だから、だから…静かなところで暮らそうって…そう、言って…たの…に…ぅ…く…っ…」
頭に一人の修道女の姿が浮かぶ。彼女は救われたが、何故この子は救われないのだろう…。
俺は黙って剣を振り上げ、泣き続ける彼女に向けて思い切り振り下ろした。
せめて、苦痛のないように。
白いフクロウが一羽、二人の死を確認したかのように飛び立った。
 
暫く、紅い血が広がるのを見ていた。
俺は女神の意思を果たした。だが、本当にこれでよかったんだろうか。
幾度も幾度も、このテの仕事が終った後にそう考える。
間違っているのは…女神の意志ではないのか。平和を望む者に血の制裁を与えるのだから…。
…だけど、もしその考えを口に出せば、今度殺されるのは俺のほうだろう。そうしたらもう誰も…誰も守れない。俺を救ってくれた彼女さえも。
無性に彼女に会いたかった。けど、会えるわけがなかった…。こんな血に染まった俺に、会う資格なんてないんだ…。
 
これ程血に染まっても…俺はまだ正義なのだろうか?

カリオン_mor う~ん……暗く、重い話しですね。 でも、最後のほうで苦悩する描写が良いと思いました。 08/01/31 01:13
ルミナレイ とても悲しいお話ですね・・・。 でも、こういうのも結構好きだったりします。 ところで、私が今書き進めていたものと、物語の核心が同じなのに焦りましたw 08/01/31 07:56
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