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ユートゥ |
07/05/03 14:58 |
「マヌスさん、包帯20個とライフポーション10個ください。」
「おうユートゥ。何だ、ダンジョンでも行くのか?」
「ええ、ラビダンジョンに行ってきます。」
僕がそう言うと、ははあん、とマヌスさんは意味ありげに笑った。
「なるほどね、やっぱりお前も健全な男って訳だ。」
「いや別にそういう目的で行くんじゃ・・・。」
「あ~何も言うな。言わなくても分かってるって。ほれ、注文の品だ。誘惑されてやられるなよ~。」
嫌らしげな笑いを浮かべて、マヌスさんは僕に品物を手渡した。何か勘違いしてるなぁ~。いや、確かに目当てはサキュバスなんだけどさ。
マヌスさんの家を出ると、僕はさっきから不機嫌に黙りこくっているディアに声をかけた。
「ディア、いつまでへそを曲げている気だ?」
反応はない。仕方なく僕はもう一度呼びかけた。
「ディア。」
「何よ。」
ドスの利いた声が返ってきた。
「何よ、じゃないよ。何が不満なんだ?朝ご飯ならちゃんとあげただろ。」
そう言うと、ディアはますます怒り出して僕に食って掛かった。
「何よ!昨日だってラビに行ったでしょう!どうせあの淫乱女が目当てなんでしょ!?まったく、これだから男は!」
僕がバスタードソードに宿らせた精霊ディア(ディアオーラ)。普段から口の悪い奴だが、根は良い奴だ。今回彼女が怒ってる訳は、要するにただの嫉妬だろう。
「違うってディア。そりゃ確かにサキュバスに会いに行くんだけど、それはただ単純に倒しにいくだけで、サキュバスを見て楽しみたいんじゃないよ。」
「ふん、どうだか。」
「本当だって。お前も見てただろう。昨日の僕の醜態を。」
「ああ、サキュバスにやられて、ひ~ひ~言いながら逃げ帰ったあれね。よ~く覚えてるわよ。ふん、あんな女に鼻の下伸ばしてるから負けたのよ!それでも懲りずにまた行こうっていうの!?」
「そうだ。今日は復讐の為に行くんだ。」
「復讐?」
ディアが怪訝そうに聞き返す。
「そうだ。僕はやられておめおめと引き下がる男じゃない。昨日の仕返しはさせて貰う。」
僕はそこにサキュバスがいるかのように、虚空を睨み付けた。
「あんた、意外と執念深いのね・・・。」
ディアは呆れたように言った。
「それはどうも。ところで、今回はお前を使うんだからな。しっかり頼むぞ。」
ディアはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「わかったわ。サキュバスに色目使いに行くんじゃないんだったら良いわよ。元々あんたとは契約してる身だしね。面倒だけど力を貸してあげる。」
僕はそれを聞いて苦笑いした。
「ありがとう、ディア。」
「着いた。ラビダンジョンだ。」
「いよいよね・・・。」
僕は今、ラビダンジョンの女神の祭壇の前に立っている。装備している武器はディアただ一振り。いつもは二刀を使うのだが、ディアを使うのなら話は別だ。ディアは特別だ。他の剣と一緒に使うことはしない。
ディアもそれが分かっているので、何も言わない。
しばらく祭壇の女神像を見上げていた。多分、ディアもそうしていたと思う。
やがて、僕は言った。
「そろそろ行こうか。」
ディアは何も言わなかったが、うなずいたのが気配で分かった。
僕は祭壇に、用意しておいた供え物を落とした。
途端、視界が反転し、気がつけばもうダンジョン内部に入っていた。
「よし!行くぞ!」
僕は気合を入れて進み始めた。
入る度に構造が変わる、まるで迷路のようなダンジョンは、ともすれば迷いそうになる。僕は壁伝いに慎重に進んだ。しばらくすると開けた場所に出た。正方形の形をした小部屋だ。奥に一つ、宝箱があった。
早速かい。僕は武者震いをしながら宝箱に近づく。箱に手をかけて、
「開けるぞ、ディア。」
「ええ、いつでも良いわよ。」
一気に開け放った!
次の瞬間、入ってきた扉と、先に通じる扉が閉じられ、そして六体のスケルトンが現れた!
「さ~て、一暴れするか、ディア!」
僕は言いつつディアを構え、スケルトン達に斬りかかった!
(後編へ続く)