マビノギ

自己の偽り

06/08/24 05:08

死にたい？・・・否、解らない。
生きたくは無い。
辛くても、悲しくても、苦しくても、寂しくても生きる？
否、死にたい、安らかに。
 
中学は嫌いだった。
極々一般的な地元の公立。
教師は不良の生徒を度々殴り蹴りしていた。
受験のことだけを教えられた・・・そんな気がする。
勉強は嫌いじゃなかったし、むしろ得意だった。
友達も大勢居た、男友達も女友達も。
何時からか勉強、否、学業が嫌いになった。
勉強は好きでも学業は無意味だった、そう感じていた。
授業が嫌いになって次第に中学自体行かなくなった。
自分だけが正常に思えた。
仲間たちや同級生が何故あんな所に行くのか・・・理解できなかった。
 
受験を受けた、少しは高校と云うものに前向きだった。
不登校、当然内申が悪く私立に入学した。
もう半年も勉強しておらず受験勉強もしなかった、まったく。
特別進学クラス、光の差し込まない湿っぽい部屋だ。
中学からの友人が数人、同じクラスになった。
直感で判別できる熱血系の教師。
中学のに比べれば幾分まともだろう。
3日で通うのを止めた。
止めたのか、諦めたのか、そもそも何も期待していなかったのか。
簡単な問いかけだった・・・何も期待していなかった。
3日で何が解るのかと、自分以外の誰しもが感じただろう。
変わっていなかった。
中学も高校も似たような物だと、すぐに解った。
そして変わっていなかった、自分自身が。
 
5年。
まったく外出しなかったわけじゃない。
仕事はしなかった、一度もしたいと思わなかった。
長かったのか短かったのかは知らない。
解らないんじゃない・・・知らないんだ。
急に息苦しくなって叫びたくなる日が稀にあった。
外に出たくて、一日中家の中に居た日が度々あった。
高校とか将来のことを考える日が翌々あった。
何もかもが嫌で不安な日が自分の日常だった。
 
20歳になって少し前向きになった。
違う・・・前向きにさせられた。
地元の小売販売店に働きに行った。
馴れるはずも無いと思っていたが、少しずつ馴染んでいった。
元気な挨拶、親身な接客、笑顔の応対。
時々嫌になったが苦痛だけでも無かった。
わたしもやればできる、本当に・・・・・そう感じた。
休憩時間には哲学書を読んでいた。
学ぶことへの意欲は、寧ろ以前よりずっと強くなっていた。
大学なんて消したはずの概念を時々思い浮かべていた。
正常、マトモ、普通・・・けれどそれはやはり・・・・・夢だった。
 
明日の出勤は朝7時、大丈夫12時には布団に包まった。
30分経ったが眠れていない。
時計を見ると眠れないまま1時間が過ぎていた。
時計の針が2時を指すのを覚えている。
意識が途切れぬまま3時を迎えた。
4時を回った時部屋には明かりが灯っていた。
強迫観念と言うそうだ。
眠らなければ・・・しかし、思えば思うほど眠れない。
ジレンマは精神的苦痛となり、苛立たせ。
・・・・・そして諦めさせた。
 
朝の光が辺りを包む頃、一人の男は立ち尽くしていた。
5時が10分程過ぎたことを指し示す、洗面所の時計が視界に入る。
周りを暫らく探索し何本かの・・・剃刀を見つけていた。
何度も止めようと、そう思ったのかもしれない。
記憶の糸を手繰り寄せても覚えてはいなかった。
最後には必ず、と・・・・・・・正しく病気だ、狂っている。
 
痛みが走り、やがて血が滲んだ。
決して深くは切らなかった、ほんの僅かの傷と痛み。
しかし、当惑した。
滲む血の量に値しない、激しい当惑だった。
心臓の音が早くなり、何故か喉が渇いた。
視界がぼやけ、平衡感覚が無くなっていた。
119番に半ば冷やかしの電話を掛け、暫しの会話。
その最中、一瞬の気絶を記憶した。
 
仕事は・・・止めようと思う。
今が一番忙しい時で、本当に申し訳ない。
カウンセリングを受けようと考えている。
受けなければ・・・違う、受けたい。
数日前まで自分はマトモな人間だと思っていた。
何処かでずっと思っていたし、実際仕事にも行けた。
はっきりと異常だと自覚した。
ネットで出来る幾つかの簡単な精神テストでは、あらゆる項目が危険域を示した。
今日の午前中に電話で問い合わせをする。
何処の病院、クリニックが良いのか解らないがまずは近場に。
 
意識、無意識、自己、自我、相互性、必然性、義務感、コミュニケーション
意味、価値、自由、幸福、内的、外的、依存、陶酔、科学、論理、生、死、存在
 
生きる意味が無い。
科学は生きる意味を認めていない。
生きる意味を決めるのは自分だ。
自己に陶酔するか他人に依存するか。
一人きりの生きる意味なんて存在しない。
生きる意味・・・・・探し出せるなんて・・・・・・・・思えない。