|
坂下祥子 |
06/07/15 22:37 |
エリンに着いて間もなくナランチャは全財産を中華にスられ
遠い異世界の地のド真ん中で無一文となってしまったのだ。
ナランチャはやっと理解した。
至る所で接する人間の負の部分が、彼の精神を蝕んでいた。
「誰も信じることなんて出来ないんだ!
周りに存在する人間全て!
皆がオレを陥れようと狙ってるんだ!!」
そしてその「導き出した答え」に
ナランチャは心の底から恐れおののいた。
「なんでもっと早く気付かなかったんだ!
みんな敵だったんだ!」
そう信じた。
気力も無くなっていた。
ひとりぼっちだった。
心底 まいっていた。
ナランチャは10歳(未転生)にして、ファンタジーライフを捨てていた。
そんな時だ。
野良猫のように生産士の捨てたシルクをあさっているナランチャのところに
累積300くらいの青年が通りがかった。
名前をフーゴといった。
彼はPTにナランチャを引き入れると
その場にいた三人のPTメンバーと作業中のギルメンに向かって、叫ぶように言った。
「こいつに保護つき魔法制服を作ってやりたいんですが、かまいませんねッ!!」
紡織中だった仲間は何も質問するわけでもなく
かといって嫌悪の表情も無く、作成された普通シルクで魔法制服(保護2)を作り
それを薄汚い小僧の前に差し出した。
着替えが済むと、彼は馬を呼び
そして、ナランチャをアルビDに連れて行った。
コツがつかめずやられまくっていたナランチャの戦闘技術は
三週間も訓練すると、どんどん良くなった。
男は何も喋らないので、ナランチャの方から聞いた。
「なんでオレなんかに こんなことしてくれるんです?」
彼はその質問に答えなかったが
感情を込めない態度でこう言った。
「そうしたいと言うのならしばらくオレのギルドに居てもいい。
だが最初は紡織で金を稼ぐもんだ。そしてキアDへ行け!………いいな」
ナランチャは訓練中、
うすうすこの人は「生産士」なんじゃあないか、と思いこう言った。
「もうソロではいたくない!何でもやりますッ!
あんたのとこで仕事させて下さいッ!!」
すると、なんと突然 彼は怒り出した。
「甘ったれたこと言ってんじゃあねーぞッ!このクソガキがッ!
もう一ペン同じことを抜かしやがったらてめーを横殴るッ!!」
「彼」の言う通り、ナランチャは生産を始め、学校にも通い始めた。
だが中華には、もう決して心は許せない
いつも考えていたのは、彼の『怒ってくれたこと』…だった。
『なぜ彼はイキナリ怒ったのだろう?』
でもあの怒りは『呆れ』だとか『嫌悪』だとか
人を『侮辱』するようなものは、何もない怒りだった…
効率マンセーや中華がオレを『怒る』時とは大違いだ。
マジになってこのオレを怒ってくれた、彼には何の得もないのに…
彼のあの態度のことを考えると“勇気”が湧いてくる。
ナランチャは『彼とその仲間の為に働きたい。
男っていうのは、ああいう人の為に働くものだ』
………ひたすらそう思うようになった。
そして半年後・・・
ナランチャは周囲には秘密で、ダンバートンの『シモン』に会いに行き・・・
紡織還元クエに『合格』したのだった。
マビの先輩が教えてくれた初めてのスキル。
それは紡織で私は10歳(未転生)でした。
そのスキルはマゾいけど実入りが良くて
こんな素晴らしいスキルを使える私はきっと特別な存在なのだと感じました。
今では私が生産士。 初心者に教えるのはもちろん紡織。
何故なら、彼もまた特別な存在だからです。