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卍閼卍_cic |
06/07/01 21:10 |
解説
北朝鮮で初めて開発された、2段式中距離弾道ミサイル。
テポドンとは本ミサイルの存在が最初に確認された北朝鮮東部の地名、大浦洞(テポドン)から米国が付けたコードネームで、北朝鮮では「白頭山1号」と呼ばれているとの情報もある。Copyright (c)2003 Weapons School All rights reserved.
テポドン1の開発は1990年に着手、1998年8月31日、テポドン1を基礎とし、人工衛星と固体燃料ロケット・モーターを搭載した第3段を追加した、SLV(Satellite Launching Vehicle衛星打上げ用ロケット:日本政府見解は弾道ミサイル)を発射した。以後、発射は行なわれていない。このためテポドンの実用性に付いては疑問点も多い。
テポドン1の最大射程は2000kmで日本全土ほぼ射程内に納める。また、3段式のSLVを弾道ミサイルとして使用すれば、最大射程は5000kmとされ、グアム島も攻撃できる。
CEPは3000m以上でピンポイント目標攻撃には向かないが、東京などの大都市攻撃には十分な命中精度だ。
弾頭重量は750kgと小型のため、通常の高性能炸薬では破壊力は限定される。しかし、核・生物・化学兵器を搭載すれば相手方をパニックに陥れることも可能で、心理的効果は大きい。
テポドン1に搭載可能な核兵器の開発には、高度な技術力を必要とし、現時点では北朝鮮に独自開発能力はないとされる。 また生物・化学兵器を搭載する場合、適切な高度で、これを散布する近接信管や、エアゾル装置が不可欠である。
さらに、これらの兵器を使用した場合、相手方から報復として、同様の攻撃を受ける可能性があるため、使用には慎重にならざるを得ない。湾岸戦争時、イラクは生物・化学兵器を搭載したスカッド(アル・フセイン)を保有していたが、米国などからの核兵器による報復を怖れ、使用しなかったとされる。
テポドン1は、第1段にノドン・ミサイル、第2段にスカッドCミサイルの派生型を利用している。開発にはロシアまたは中国による技術援助を得たとされる。構造に付いては北朝鮮の公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。
構造は、先端は弾頭部分となっており高性能炸薬、核、生物、化学兵器など750kgを搭載できる単一弾頭である。
弾頭部分後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導部分だ。
この後ろはスカッドCミサイル派生型を基礎とした第2段で、燃料のUDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)のタンクと、酸化剤であるIRFNA(Inhibited Red Fuming Nitric Acid:抑制赤煙硝酸)タンク、燃料と酸化剤を混合して噴射する燃料ポンプ、およびロケット・エンジンを内蔵する。最後部にはグラファイト(黒鉛)製ベーンが取り付けられ、推力偏向方式により飛行方向を制御する。
第2段と第1段の間には、中間ステージと呼ばれる第1段と第2段を接続する構造物が取り付けられる。
第1段はノドン・ミサイルを基礎としており、燃料のUDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)のタンク、酸化剤であるIRFNA(Inhibited Red Fuming Nitric Acid:抑制赤煙硝酸)タンク、燃料と酸化剤を混合して噴射する燃料ポンプ、およびロケット・エンジンを内蔵する。この後方は燃料と酸化剤を混合して噴射する燃料ポンプと、ロケット・エンジンである。
最後部にはグラファイト(黒鉛)製ベーンが取り付けられ、推力偏向方式により飛行方向を制御する。外側には安定翼4枚が取り付けられる。
【捕捉】 第1段の燃料に関してJane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMSではケロシン(灯油)としている。しかし、2段目の燃料がUDMH(非対称ジメチルヒドラジン)であることから、あえて第1段と第2段の燃料を別にするメリットはない。またケロシンは安定しており・毒性も低いので貯蔵には向くが、性能面では非対称ジメチルヒドラジンの方が優れている点から、Weapons Schoolは第1段の燃料も非対称ジメチルヒドラジンであると推測する。 |
テポドン1はノドン・ミサイルなどに比べ大型であるため、自走式発射機ではなく固定式発射台から発射される。発射準備には多段式のため時間を要し、発射の兆候を偵察衛星などで捕捉され易い。発射施設自体を地下式にして、発射準備段階を偵察衛星に捕捉されない、工夫が必要である。
テポドン1は発射後、第1段、第2段を切離し、弾頭部分を分離する。この後、弾頭は与えられた運動エネルギーにより弾道飛行して目標に向かう。最高高度は凡そ300km、秒速4km(音速の12倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。高速度で落下してくる弾頭の迎撃は困難で、THAAD、PAC-3などの高性能迎撃ミサイルを必要とする。
テポドンには、この他、第1段を新規設計した大型ブースター、第2段にノドン・ミサイルを使用して、射程6000km以上の大陸間弾道ミサイル、テポドン2も開発されているとの情報もあり、万一、実用化されれば、アラスカなども攻撃可能となる。
名 称 |
テポドン1 |
テポドン1SLV 衛星打上げ用ロケット |
テポドン2 |
全 長m |
27.0 |
32 |
35 |
弾体直径m (第1段/第2段) |
1.32/0.88 |
← |
2・1/1・32 |
発射時重量kg |
21700 |
25700 |
64000 |
搭載弾頭 |
高性能炸薬 生物・化学兵器 子弾 |
← |
← |
弾頭重量kg |
750 |
← |
← |
最大射程km |
2000 |
5000 |
6000以上 |
CEPm |
3000以上 |
4000以上 |
不明 |
備 考 |
第1段ノドン・ミサイル 第2段スカッドC派生型
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テポドン1をベースに、固体燃料ロケット・モーターを装備する第3段を追加した、衛星打上げ用ロケット。弾道ミサイルとしても使用される可能性あり。
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第1段新規設計した大型ブースター 第2段ノドン・ミサイルを使用 開発中?
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射程6000kmを超える長距離弾道ミサイルは、秒速5km(音速の15倍弱)以上の速度で大気圏に再突入するため、大気との摩擦で、高温、高応力にさらされる。製造にはノドンなどの、射程1200kmクラスの中距離弾道ミサイルより、更に高度な製造技術が不可欠である。
また実際に6000kmの射程で発射して、大気圏再突入時に、弾頭が高温、高応力に耐え、正常に機能することを、少なくとも数回、確認する必要がある。 実射が行われていない、北朝鮮の長距離弾道ミサイル、テポドン2の実用性は極めて低いと推測する。
性能 2005/4/16改訂
テポドン1
全 長:27.0m
弾体直径:1段目1.32m/2段目0.88m
重 量:21700kg
弾頭重量:750kg
最大射程:2000km
C E P:3000m以上