マビノギ

モルーエ

05/09/26 16:37

 
この世界に足を踏み入れてひと月ほどだったわたしは
一人で知りうる限りのことを知り、そろえられる物の
全てを揃えていた。
（勿論予備知識も情報サイトも知らないわたしには限界はすぐ来た）
 
一匹狼を気取ろうとかじゃなくて、人と交わるきっかけが
見つけられなかったから。
 
やっと手に入れたモンゴ旅行服にダンバートンでアルバイトを繰り返し
やっと手に入れたロングソード。
バイトの報酬の帽子に適当な値段の靴と手袋。
 
たったそれだけを揃えるのにひと月を費やした。
 
あちこち放浪はしてみたけれど
プレイヤースキルなんてそんなものはなくてただ殴って殴られる。
戦略も減った暮れも無いわたしにはティルコネイル南草原以外に
落ち着ける場所がなかった。
 
数日をそこで過ごすといつも同じ人が傷ついた人を治して回っている
「ああ、いわゆる辻ヒーラーだな」
そう思いながら、当時のわたしにはヒールもなかったので
お世話になりっぱなしだった。
 
治してもらったら「ありがとう」「どうも」
だけじゃない、何か伝えたいもう一言。
 
そんなふがいの無い自分にある日ちょっぴりだけ勇気がわいた。
いつも見かける人に言ってみた。
 
「いつも治してくれてありがとう」
 
チョット長いだけの文章だけど、いつも感謝している旨を伝えた。
そこから会話が始まった気がする。
そこから輪が広がって、そしてパーティーに入ることを覚え、
リーダーの代わりを務めるようになって、時にはリーダーになって
 
あの日の稼ぎの悪さが嘘のようにお金をかけた装備も出来るようになった。
 
初めてこの世界に足を踏み入れて4ヶ月が過ぎた。
わたしが最初に会話をした人はもう居ない。
最初の頃に出会った人で付き合いのある人ももう少ない。
 
だけど常にこの世界にはぽろぽろと新しい人が来る。
「いつも見かける人」の面子を少しづつ変えながら
わたしはひたすら思い出のティルコネイル南草原にいる。
 
あの日のわたしのような人を見かけたならパーティーに誘いたい。
オープンチャットとパーティーチャットの使い分け、
そして話題を振ったり、時に自分の失敗をネタにしてみたり。
 
いつか自分も誰かが差し伸べる手をとって、
次に開く扉を一緒に開けてあげられるように、そんな風になりたい。
 
草原から旅立っていった人たちがたまに帰ってきた時に
おかえりなさい
そう自然に言える人になりたいものです。