マビノギ

レヴェリィ

05/09/10 15:34

スレ「大切な人はいますか？」の影響で、昔の記憶がぐるぐると頭の中を巡りっぱなしです。
これを解消すべく、過去の私の記憶に関して、書き込みます。だらだら長いです。
誰かに知ってもらえるだけでいいんです。
ごめんなさい。気分が悪くなる表現もあるかもしれません。
 
昔の私には、誰かを好きになるという感情が理解出来なかった。
だから、誰かに「付き合ってください」と言われても、全て断った。
相手が真剣なほど、軽くＯＫする気にはなれなかった。
 
中二の夏。塾の夏期講習。
それが終わった後に、３０分だけ話した相手がいた。内容はくだらなさ過ぎて憶えていない。
それから一年間、その相手、Ｎとは一切関わりがなかった。
中二の夏。塾の夏期講習。
それが終わった後に、私は一年前と同じように呼び止められ、Ｎに言われた。
「私と付き合ってみない？」と。とても軽く。
私も、異性と付き合う事に興味がなかったわけではない。
「別にいいけど？」と、軽くＯＫした。
 
付き合って間もない頃、Ｎは「君と結婚する人は料理が出来ないとダメ！」と言い出した。
私が食事というものを、あまり好んでいなかったせいだと思う。私は一人だと、ろくに食事しない。
 
ある日Ｎと水族館に行った。その時Ｎはお弁当を作ってきた。
Ｎが満面の笑みで弁当箱を開けた瞬間、Ｎの顔は凍りついた。
弁当の中身は白米。つまり一面ご飯だけ。強いておかしなところを挙げれば、海苔が数枚、埋め込まれていること。
「どうした？」何故そんな顔をしているのか解らなかった私は、訊いた。
「おにぎりが・・・融合してる」
「・・・」
握りが甘かったのか、ご飯がやわらかかったのか、入れた当初は三角形だったおにぎりが、弁当箱の中で完全融合を遂げたらしい。海苔はそのなごり。
 
またある日、私がＮの家に行くと血みどろのＮが迎えてくれた。半錯乱状態だったＮは、私に飛びつき言った。
「ト・・・トマトガ・・・トマトマトガガガ・・・！！！」
Ｎはホールトマトからミートソースを作ろうとしていたらしい。
料理中、ホールトマトの缶の山(何故山ほど買ったのか・・・)を崩したＮは、慌てて缶を片付けたそうだ。
が、その間に、鍋の中のホールトマトの缶が加熱。内圧に耐え切れず爆発。
結果、Ｎ自身はもちろんキッチン中にトマトが飛散した、と。
 
またまたある日、Ｎはチャーハンを作っていた。めずらしく成功の予感。
調子に乗ったＮは、チャーハンのフライ返しに挑戦した。
黄金の米は宙を舞い、そのほとんどが・・・Ｎの頭上へと降り注いだ。
私はホールトマトの時同様、片付けを手伝ったが、流石のＮも泣いていた。
 
まぁＮは、究極的に料理がダメだった。
 
私達は何でも逆。Ｎは陸上部で、私は美術部。Ｎは社交的で交友関係が広く、私は非社交的。Ｎは本が苦手で、私は大好き。Ｎはお洒落好きで、私は無関心。Ｎはよく喋り、私は無口。Ｎの口癖は「楽しいね」、私の口癖は「退屈だ」。
同じところと言えば、名前が少し変わっていることぐらい。
 
休日の午後。私は何となく、雨の中Ｎの家に行った。多分、会いたかったんだ。
Ｎの家の前に着くと、Ｎがいた。玄関の前で傘をさして。
「たぶん来ると思って」
 
平日の午後。私は何となく、学校を早退してＮの家に行った。本当に、なんとなく。
もちろん玄関前にＮはいない。
垣根の亀裂の間から鍵を取り出して、Ｎの家の玄関を開ける。この時間に親がいないのは知っていた。
Ｎの部屋へ行くと、Ｎは泣いていた。私に気づくと抱きついてきて「また・・・裏切られた」と言った。
 
Ｎは人間不信だった。そして、周りに嫌われないよう取り繕う自分も大嫌いだった。
Ｎはかなりモテるらしく(正直、私にはよく解らなかった)定期的に告白されたり、ラブレターを送られたりしていた。
そのたびにＮは欝になり、手紙を焼きつつ、「上辺しか知らないくせに・・・愛してるとか言うな・・・」と言っていた。
 
私はたまに、Ｎの家に来てもＮを放っておくことがあった。
Ｎはゲームが苦手なはずなのに、私の好きな格ゲーが置いてあるからだ。
ある日それに熱中していると
「ねぇ」とＮに声をかけられた。
「切っちゃった」
まるで包丁で指を切った時のような、おどけた感じでＮは笑った。
手首から血を流して。
自分でも不思議なぐらい冷静に、応急セットを取りに行って、包帯を巻いてやった。
「なんでしたんだ？」と訊いた。
「こうすれば、もっと君の優しさが解るから」
「そうか？」
「君の手は暖かいし」
「そういう人間は心が冷たいらしい」
「それは冷え性の人の言い分だよ」
それからも、何度も放って何度も切って何度も巻いた。既に日常化されていた。
 
そんなＮは私の事を良く理解していたのだと思う。
他の人間から「お前って何考えてるかわからない」と言われる私だったが、Ｎは私の行動や思考をある程度読んでいた節があった。
 
「人は何のために生きると思う？」Ｎが訊いた。
「楽しむため」
「私は幸せになるためだと思うよ」
 
「何で私なんだ？」私は訊いた。
「理由はいっぱいあるよ。一つ挙げるなら、寛大だから、かな？あとはね・・・教えない！」
結局、よく解らなかった。
 
「死ぬのって、良さそうだよね」
「なら何で死なない？」
「そいう質問するの、君ぐらいだよ？」そう言ってＮは笑った。
「死ぬのは良さそうだけど、君といる方が確実にいいから。だから死なないの」
 
「結婚っていいなー」ドラマの影響か何か、Ｎがそんな事を言った。
「じゃあ２０になったら結婚するか。親の承認いらなくなるし」冗談だったか、本気だったか。
「あ、いいね！子供は何人？」
「私は子供嫌いだ」
「えー」
「あーでも、女の子なら大歓迎」
「えー」
 
高二の秋。誤解が生まれた。
私が異性といたのを、Ｎが浮気だと思った。
私は否定した。Ｎは納得したようだった。
その日、Ｎの部屋で紅茶を飲んだ。
眩暈がした。Ｎが上から圧し掛かってきた。朦朧とする中、私はＮを突き飛ばし、部屋を出てドアを閉めた。
眩暈に負けて、その場で膝をついた。
ドアの向こうからＮの泣く声が聞こえた。
私はドアを開けて、壁にもたれ、ただ立っていた。
「・・・私の事、愛してる・・・？」
投げかけられた質問に、即答できなかった。未だに私には、人を好きになるという感情が理解できなかった。
Ｎに対して抱いている感情が、Ｎの言うものに当てはまるのか、解らなかった。
泣き顔を見ていられずに、私は逃げた。
その後、近くの公園で気を失い、次の朝、知らないお婆さんに起こされた。
 
私はＮと関わらなくなった。関われなくなった。解らないままだったから。
それからの日々は、殊更に退屈だった。
 
高三になったばかりの頃、告白されて異性と付き合った。
結構楽しかったと思う。楽しかったはずだと思う。
結局その人とは三ヶ月で別れた。
それからは、何故か虚無感に苛まれた。
本当はその時点で気づいていたのかもしれない。
Ｎとの日々の大切さに。
 
高校卒業式の前日、Ｎから電話があった。
「今でも私は貴方が好き」と。
なんと答えればいいのか解らなくて「君の料理は美味くない。でも私は好きだ」
とか、どうでもいいことを言った。
Ｎは前みたいに笑った。自分のバカさ加減に呆れた反面、もしかしたらあの時間を取り戻せるかもしれないと思った。
だから、私はＮに告白することに決めた。
セリフを決めて、Ｎの家に向った。
 
前にＮが立っていた玄関前には、大きな提灯があった。庭には、大勢の人。
その中に制服を着た人間が多くいても、「親か何かが死んだかな？」と思った。そう。そこは葬式をしていた。
名簿に名前を書いて、奥へと進む。
位牌の向こうに、Ｎの作り笑いがあった。
久しぶりにため息が出た。ため息しか出なかった。
卒業式の日。Ｎは手首を切った。私の包帯は間に合わなかったらしい。
 
未だに解らない事がある。
Ｎは何故、私を恋人にしたのか。
 
もし私が心から泣けたら、心から笑えたら、あの人は帰ってくるだろうか？なんて、ありがちな空想をしてみたり。
 
毎日夢に見る。もう戻らない確実にいい時間。
 
余談・・・それ以来、私の「好みの異性」に「自殺願望のある人」の項目が出来ました。あは☆
 
 
あーマビ関係なさすぎ。しかもウザすぎ。