マビノギ

御剣鏡花_mor

05/06/05 06:45

遠くのほうで私を呼ぶ声が聞こえる。
楽しげな声に混じって、優しげな声が聞こえる。
私のことを心配してくれている、私に微笑みかけてきてくれる、その優しい声。
目を開けようとしても視界は白んだままだ。
見たい、その顔を見たい。
手を伸ばしても、何もつかめない。
見つからない、見つからない優しい君。
　　　君……
私の意識に小鳥たちのさえずりが染み込んできた。
 
今朝も丘陵の森に小鳥たちのさえずりがこだまする。
壁にかかっている古時計が六時を告げた。
時計は古いほうがいい、鐘の音が違う。
時を経た鐘は、落ち着いて存在感のある音色を醸し出す。
目を開くと寝台の天蓋の柔らかなピンク色が飛び込んできた。
私は……幻想の中に生きているな……
もう少し、部屋の色調を理性的な色に変えたほうがいいかもしれない。
 
理性的、か。
そうだな、理性的な朝を過ごそう。
私は寝台の横にある小机の上のクリスタル・ベルを鳴らした。
ノックの音が古い樫戸の向こうからする。
「お嬢様、失礼したします」
そう言って中に入ってきたのは侍女の夕霧だ。
もちろん源氏名で、本名は知らない。
装飾過剰のパーラーメイドドレスは私の趣味だ。
幻想のために金をどれだけつぎ込んでいるのだか。
私は自嘲したが、そのような意識は半瞬で消えた。
「Siegfried Idyleを、それから時事放談をつけなさい」
「時事放談、でございますか？」
早速音響装置に電源を入れながら、夕霧は首をかしげる。
「確かそういう名前のプログラムがあったと思う」
「はい、かしこまりました」
最近寝室にもテレビを置かせた。休日の朝などはなかなか面白いプログラムをやっている。
政治など別に興味もないが、たまに見るのは理性をかきたてる。
テレビの電源が入ると、画面に中曽根康弘はじめとする往年の政治家たちが映った。
「夕霧、早速ですが朝食の用意をしなさい」
「かしこまりました」
夕霧は部屋を去った。
プログラムの内容は聞き流した。
 
再びノックの音。
「朝食をお持ちしました」
「うん、ご苦労」
私は寝台の上の銀盆に目をやる。
……なにもない　なにもないではないか
え？　あれ？　おかしいな？　ここは私の屋敷の……はず？
 
そうか、今日は妹の友人がきているからパン屋でパンを買ってきたのだっけ
もぐもぐ
うん、まあ、いいや、これで
だが！　一応牛乳だけは一流品だぞ！　さすがにジャージー乳ではないがな！
 
というわけで、皆さん、朝ご飯はなんでしたか？
 
しかし、この掲示板には文章に関しては猛者がそろっているので、ちゃんとした文章力を見せつけるときには緊張しますね。
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